ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「昭和っぽい経歴」「野性の本能」に技術と理論が融合 勅使河原弘晶、世界挑戦への新境地
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byNaoki Fukuda
posted2020/10/10 11:01
「強くなりたい」と言葉にする勅使河原弘晶(左)は河村真吾を下し、世界挑戦へ前進した
昭和っぽい経歴をもつ貴重な存在
拳四朗の練習を目の当たりにし、ボクシングに取り組む姿勢や意識の高さに「これが世界チャンピオンなのか」と刺激を受けたことも大きい。「今までは試合が終わったら遊びたいと思ったけど、今はすぐに練習したい、強くなりたいという気持ちがすごく強い」との言葉は、メンタル面での成長も感じさせる。
スーパー・バンタム級は日本人タレントの豊富なクラスで、IBF暫定世界王者の岩佐亮佑(セレス)を筆頭に、元IBF世界王者の小国以載(角海老宝石)ら多くの選手が世界タイトル挑戦を狙っている。その中でも勅使河原の充実ぶりはライバルたちを一歩リードし始めていると言えるだろう。
ミドル級王者の村田諒太(帝拳)、バンタム級2冠王者の井上尚弥(大橋)らアマチュア出身選手が全盛のボクシング界にあって、少年院を出てからボクシングを始めたという昭和っぽい経歴の持ち主はいまや貴重な存在。新型コロナウイルスの影響もあり世界挑戦のめどは立っていないが、30歳にして新境地を開きつつある勅使河原の今後に大きな期待が集まる。