猛牛のささやきBACK NUMBER
初打席初ホームラン&初お立ち台・大下誠一郎って何者? 父が手作りしたバッティングセンターで……
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/09/20 09:00
初打席初ホームランを放った大下。中嶋監督代行も求めていたという明るいキャラクターはオリックスにどんな効果をもたらすか
グラウンドに響き渡る大下の声
大下といえば“声”だ。2月のキャンプ取材に行った時、グラウンドに絶えず響いている大きな声の主を探すと、それが大下だった。
今回のほっともっと神戸での3連戦でも、自分の打席が終わってベンチに戻るとすぐに、中嶋監督代行に一番近い、最前列の一番端に座って声を出し始める。守備の際も投手に頻繁に声をかけていた。
実は、ここまで声を出すようになったのはプロに入ってからだと言う。
「人一倍声出して、目立とうと思って。それにオリックスはどちらかというと静かな人が多いんで、自分が声を出して盛り上げようと」
その狙いは成功。声と元気が、大下を唯一無二の存在にした。
小谷野コーチから伝授された駆け引き
もちろん声だけではない。打撃でも、プロ入り後は、「相手のピッチャーが嫌がることができるように」と意識してきた。それは、現役時代にその道の達人だった小谷野栄一二軍野手総合コーチから伝授されたものだ。
「ファームにいる時に、栄一さんに、『ピッチャーが嫌がることを考えろ』と常に言われていました。ただやみくもに行くんじゃなくて、しっかり頭を使うようにって。ここではこれを投げてくるやろうなとか、ここでこういう球を打ったらピッチャー嫌がるやろうなとか、いろんな駆け引きを教えてもらいましたし、とにかく追い込まれたら粘る、バットに当てる、ということを意識してやってきました」
練習量も人一倍。キャンプでは一番最後まで残って打ち込み、シーズンが始まってからはオフを返上して練習することも。それでも、「自分としては努力と思ってなくて。好きな野球をやってるんで、当たり前のことかなと思います」と言ってのける。