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線審が「靴破れてる!!」ゲーム大好き芸人、麒麟 川島明がスポーツをあきらめた話

posted2020/09/16 07:00

 
線審が「靴破れてる!!」ゲーム大好き芸人、麒麟 川島明がスポーツをあきらめた話<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

ゲームとともにいかに生きてきたのかを綴った単行本『ぼくをつくった50のゲームたち』を上梓した麒麟・川島明氏。

text by

川島明

川島明Akira Kawashima

PROFILE

photograph by

Ichisei Hiramatsu

『Sports Graphic Number』で連載していた麒麟 川島明氏のエッセイが『ぼくをつくった50のゲームたち』というタイトルで1冊にまとまりました。それを記念し、書籍に50あるエッセイのなかから1つ公開します。

『キャプテン翼』に憧れ、小4からサッカー部に入ったぼく。そこから中学3年で引退するまで続けていたので、サッカーは一番長くやっていたスポーツです。

 年末になると青いジャージを着て個性的な運動神経を惜し気もなく披露しているぼくにも、スポーツに没頭していた時期があったのです。

 中学時代は部員が20名。みんなうまくて、ぼくは公式戦には一度も出たことがありませんでした。でも練習だけは3年間しっかり続けて、最後の試合を迎えたんです。

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 対戦相手は槇島中という、Jリーガーも出たぐらいの強豪。ぼくらは早々に4点を奪われていました。

 ベンチのぼくは、相手チームに「秘密兵器」だと思われようとジャージの襟をたて、ポケットに手を突っ込みながら試合を傍観。そしてボソッと「これじゃ俺の出番が回ってくるなぁ」などと呟いたり、ウォーミングアップの途中に突然左胸を押さえて膝をつき「天才だけど心臓病」なガラスのエース、三杉淳を気取っていました。全く誰も見ていないのに。

旗でぼくの右スパイクを差し「靴破れてる!!」

 しかし試合は残り10分。「最後まで公式戦には出られなかった」とあきらめた瞬間です。監督が「川島、最後に仲間と一緒にやってこい」とぼくを送り出してくれたんです。

 ついに夢が叶いました。アップもそこそこに興奮しながらいざ出ようとしたそのときです。

「ちょっと待て!」

 線審が僕をとめました。そして旗でぼくの右スパイクを差し「靴破れてる!!」と声を荒げました。そのとき気づいたのですが、練習だけはめちゃくちゃしていたぼくのスパイクには靴下が見えるほどの穴が開いていたんです。「破損したスパイクは危険なので公式戦では認められない。替えるか塞ぐかしろ!」とさらに激昂する線審。試合している仲間は事情を知らないから早くピッチに入れと怒り出し、時間はどんどん進んでいきます。

【次ページ】 仲間とは全く違う理由でぼくも泣きました

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