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フェデラー「あれこそがテニスさ」大坂なおみがガウフに見せた敬意【全米オープン】
posted2020/09/13 11:50
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
今、あの人の言葉を引用するのは時期はずれかもしれないが、大坂なおみの元コーチのサーシャ・バインは大坂が1回戦敗退を喫したウィンブルドンでこう言っていた。
「半年前までできていたことが、今できないわけはない。ちょっと自信をなくしているだけだよ。何かのきっかけで自信さえ戻ってくれば、すぐにまた強いなおみになる」
もうチームの一員ではないし、今は別の選手についている自分が話すべきではない、と遠慮しながらの当たり障りのない内容ではあったが、大坂が持つ3つのタイトルの全てをともにしたコーチの言葉には今なお力を感じた。
問題はその<きっかけ>がどこにあるのか、だった。ハードコート・シーズンに入ってからも、トロント、シンシナティと連続してベスト8止まり。全米オープンで連覇を狙う女王としては物足りない成績だ。
トロントではセリーナ・ウィリアムズとの注目の対決にあっさり敗れ、シンシナティのほうは左膝の負傷による途中棄権で、全米オープンにむしろ不安を残す前哨戦の締めくくりだった。
15歳ガウフ相手に、大胆かつ冷静に。
しかし、連覇のかかる今大会がいざ始まると、1回戦では不安定さを露呈しながらもディフェンディング・チャンピオンの重圧を乗り越え、2回戦ではよりリラックスして確かな手応えをつかんだ。
そして3回戦に迎えた相手が、ウィンブルドンで予選から4回戦に進出してセンセーションを巻き起こした15歳のコリ・ガウフだ。これぞきっかけとなるべき一戦か――。
そんな期待の中、試合自体は意外に早く決着した。6-3、6-0。ブレーク合戦となった第1セットをものにし、第2セットの第1ゲームをブレークした直後のサービスゲームを、0-40から大胆かつ冷静に5ポイント連取でキープしたところがカギだった。
もう少し安全なショットを選んでもよさそうな場面でも、リスキーなコースへフルパワーで叩き込んでいく。守備的な体勢からでも、相手のパワーを利用するだけではなく自らのパワーを覆いかぶせるようにしてショットの威力を倍加させる。強引すぎるようにも見えるショットが次々に炸裂し、決まり出せば、十分な自信が宿った証だ。