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桐生祥秀が新国立の初代王者に。
トップ選手の違和感から見えること。
posted2020/08/24 17:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Asami Enomoto
名勝負の期待は、やや肩透かしで終わった。
8月23日、新国立競技場で開催されたセイコーゴールデングランプリ陸上で、世間の注目を集めていた競技が男子100mだ。
日本歴代2位タイ(9秒98)の記録を持つ桐生祥秀と小池祐貴、さらに復活を期す山縣亮太、ケンブリッジ飛鳥、多田修平らトップ選手が名を連ね、日本記録の更新も期待されていたが、予選、決勝を通じて9秒台は一度も出なかった。
優勝した桐生のタイムは10秒14。決して悪いタイムではないが、予選を最後流して10秒09と好走していただけに、目の肥えたファンを納得させることは難しかっただろう。
やはり、コロナ禍で練習環境が変化した影響は大きかったのか。レース後の会見で選手は口々に違和感を口にした。
選手たちが口にした違和感とは?
「終始からだが軽くて地面がうまく押せなかったので、あまりいいところがなかったかなと。普段レースになると力がグッと上がってくるんですけど、今日(今季初戦)はそれが感じられなかった。レースってこんな感じだったかなって、思い出しながらやってました」(決勝8着の小池)
「アップの状態は良かったけど、いざ試合でかみ合わなくて。練習が足りないなと思いました。正直、後半は力んだし、持ち味のスタートも置いて行かれた感があるので」(決勝6着の多田)
「予選はある程度目標にしていたタイムが出せたけど、決勝は少し物足りない感じで終わったのが残念。今までしっかり腰が入って乗り込んでいけたところで、少しこう腰が抜けるような感覚があった。そこを今後どう修正していけるかですね」(ケンブリッジ)
10秒16で2着に入ったケンブリッジは、「桐生君は強かった」とも語ったが、こうしてトップ選手がそれぞれコンディション作りに苦心している様子を聞くと、今回の優勝タイムがまた違った価値を持つようにも思えてくる。