マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
弟は巨人の期待の星、兄も実力十分。
湯浅翔太に感じる力ともったいなさ。
posted2020/07/07 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hiroki Kubo
ほんとに、やっと……ようやく「野球の現場」が、私の前に開けてきた。
数日前、たまたま所用で電話をくださった仙台市の七十七銀行・小河義英監督との話の中で、次の土曜はオープン戦と聞いた。恐る恐る、おじゃましてもよろしいでしょうかとお伺いを立てたところ、
「気をつけてくださるのなら……」
と、お許しをいただいて、それっ! とばかりに仙台に向かった。
仙台の中心から、北へおよそ15キロ。富谷市のスポーツセンターの中にある七十七銀行野球場。
よくある「市営球場」のような、見慣れているはずの景色なのに、このアウェー感はなんだ。
いつもなら通い慣れた仕事場のように、スーッとグラウンドの中に入っていけるのに、何か少し躊躇するような場違いな感覚に陥るのは、「ブランク」というものなのか。
4カ月ぶりに足を踏み入れる「野球の現場」は、記者として初めて訪れた取材の場のような、経験したことのない緊張感に襲われた。
中から顔見知りのスカウトの方が声をかけてくださって、どれだけ助かったことか。
ドラフト候補が両チームに。
4カ月ぶりの「出勤」は、思いがけず初心者モードで始まった。
七十七銀行vs.東北公益文科大学。東北のチーム同士のオープン戦である。
県をまたいでの移動が「まあ、いいですよ」という状況になったとはいえ、スポーツの現場はなおも用心深く、宿泊を伴う遠征はもうしばらく控えましょう、というムードもある。
一見すると地味な顔合わせのオープン戦に、5球団ものスカウトが足を運んだのは、今秋のドラフトを視野に入れて奮闘する選手が両チームにいるからだ。