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「有観客」の熱と無観客での前進。
プロレス界の“新しい非日常”を読む。

posted2020/07/06 07:00

 
「有観客」の熱と無観客での前進。プロレス界の“新しい非日常”を読む。<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

有観客興行開始のあいさつでリングに上がったDDTの“大社長”高木三四郎。「感無量でした。言葉が出てこなかった」という。

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 今、マット界では「無観客試合」と「有観客興行」が同時進行している。

 緊急事態宣言の解除を受け、いくつものプロレス団体が6月から「有観客興行」をスタートさせた(岩手県のみちのくプロレスは5月23日から)。

 業界最大手の新日本プロレスは、6月から無観客試合を始めた。DDTやノアなど緊急事態宣言下で無観客試合を開催していた団体も多いが、新日本はタイミングとしてプロ野球やJリーグに近い。

 格闘技では那須川天心を擁するRISEが、7月12日に「無観客試合」、翌週の19日に後楽園ホールで「有観客興行」を開催する。K-1系のKrushは6月28日に新宿FACEで「有観客」、7月には2度の後楽園大会が控えている。MMAのベテラン、北岡悟は7月31日に自身のジムであるパンクラスイズム横浜でケージ大会を行なう。勝村周一朗プロデューサー体制のZSTは7月26日にグラップリング・トーナメントを開催。どちらも無観客で、クラウドファンディングで支援を募ったことも話題になった。

 プロレスでは試合を重ねながら調子を上げたり、リングに上がり続けて試合勘を保つことも重要だ。一方、格闘技は数カ月に一度の“一発勝負”。まずはジムで対人練習も含め充分なトレーニングをすることが大前提となるだけに、6月下旬からが“本格始動”となるわけだ。

キャパ半分の客席。サイン会はシート越しに。

 取材をしていて感じたのは「有観客興行」とは言えども、従来の「通常興行」とはまた別ものだということだ。

 ロードマップに従って“密”を避けた客席の数は各会場のキャパシティに対して3分の1から半分ほど。観客もマスコミも入場時の検温と手指消毒が必須だ。場内では必ずマスク着用、応援の横断幕掲示や紙テープの投げ入れは禁止。グッズ販売コーナーでのサイン会なども“今までどおり”とはいかない。

 6月13日の東京女子プロレス・板橋グリーンホール大会では、サイン&撮影会がビニールシートの仕切りつきで実施された。シート越しにファンとハイタッチする選手がいたりと、その場でいろいろと工夫していたようだ。しばらくは、とにかくできる範囲で楽しむことが大事になってくる。

 選手によっては、試合そのものも手探りの状態だ。東京女子プロレスのタッグ王者である渡辺未詩はカナディアン・バックブリーカーを得意技とするパワーファイター。家でのトレーニングではどうしても補えないものがあったという。

「筋トレやランニングはしていたんですが、相手を“担ぐ”という動きが前みたいにできるか不安でした。それとジャイアントスイング。久しぶりの試合で使ったらいつもより目が回っちゃって。三半規管も弱ってるんだなって」

【次ページ】 まだ「自粛明け」ではない理由とは。

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