猛牛のささやきBACK NUMBER
チームに安心感を与えるショート。
オリックス安達了一に芽生えた欲。
posted2020/06/26 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Noriko Yonemushi
6月19日、本拠地・京セラドーム大阪で約3カ月遅れの開幕を迎えたオリックスは、楽天に1-9で敗れ、10年ぶりの開幕戦勝利は果たせなかった。
開幕投手を務めた山岡泰輔は、コントロールよくストレートと変化球を投げわけてピンチをしのぎ、7回1失点と試合を作ったが、打線が援護できず、継投に入った8回に楽天の猛攻を浴びた。
そんな敗戦の中でも光ったのは、野球ができる喜びを全身で表わすような、遊撃手・安達了一の軽やかでキレのある守備だった。センター前に抜けそうな当たりも、安達が難なくさばいて併殺を奪いピンチを救った。
開幕戦は、アダム・ジョーンズが守るライトと、ショートへの打球が多かったが、ライトに打球が飛んだ時の不安感とは対照的に、ショートに飛んだ時の安心感は絶大だった。
「自分に求められているのはやっぱり守備。そこはちゃんとやらないとダメだと思っているので、その点はよかったかなと思います。去年は入りがよくなくて、本当に悔しかったし、恥ずかしかった。もうあんなふうになりたくないと思ってやってきたので、その分、今年は守備ではいいスタートは切れたかなと思います」
「やっぱり1年間、一軍に」
昨年の開幕時、安達は精彩を欠いていた。らしくない失策をしたり、普段なら届くはずの打球に追いつけず、安打になった。本人は言い訳しないが、開幕前日の練習中に、目の付近にボールが当たるアクシデントがあり、それが視野に影響を及ぼし、体の反応も遅らせていた。
開幕から出場した3試合すべてで失策を記録し、打撃も0安打と調子を取り戻せないまま、4月4日に登録抹消となった。再び一軍に登録されたのは、2カ月以上経った6月14日。後半戦は本来の安定したプレーを見せたが、わずか56試合の出場に終わった。
「やっぱり1年間、一軍にいなくちゃダメだ」
その思いを強くして、今年は万全の状態で開幕を迎えた。