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「逆にすごいな!」中村憲剛も驚く、
川崎内定ボランチ橘田健人の感覚。 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2020/06/19 11:00

「逆にすごいな!」中村憲剛も驚く、川崎内定ボランチ橘田健人の感覚。<Number Web> photograph by Takahito Ando

来季の川崎加入が決まった桐蔭横浜大4年・橘田健人(168cm/65kg)。

スタジアムを沸かせた6人抜き。

 21分、右中央でボールを受けた橘田は、法政大の鋭いプレスバックを受ける。完全に彼の視野外からのプレスだったが、倒れることなく、逆にその反動を利用して右足のアウトサイドでボールを前に持ち出した。対峙したDFとの球際の競り合いを制して、そのまま相手の股を抜き、2人の間をすり抜けてスピードアップした。

 法政大はすぐにもう2人DFで縦と左へのサイドチェンジのコースを切ったが、橘田は再びその間をドリブルで切り裂き、さらにカバーに入っていたCB森岡陸(ジュビロ磐田内定)をかわした。最後は飛び出してきた2mのGK中野小次郎(北海道コンサドーレ札幌内定)の長いリーチをも翻弄し、シュート。最終的にゴールカバーに入ったDFに阻まれたが、計5人のDFとGKをかわした「6人抜きドリブル」にスタジアムは大きくどよめいた。

「インカレの前はJ1、J2の3クラブからお話をもらっていたのですが、インカレ後に安武亨監督(桐蔭横浜大)から『お前、すごいことになってるぞ!』って言われたんです。どうやらJ1の数クラブからの打診が殺到していたようで。一番驚いたのはフロンターレからオファーが来たことなんですけどね(笑)」

「知る人ぞ知る存在」から「超優良銘柄」へ。彼にとって川崎からのオファーは驚きであると同時に、断る理由がない最高の吉報だった。

川崎で驚いた大島、守田らのレベル。

 橘田がこのオファーを「まったく予想していなかった」と語るのには理由がある。桐蔭横浜大と川崎の練習場は車で15分程度とすぐ近く。それゆえに川崎で怪我人などが出た時の補充として、桐蔭横浜大サッカー部の選手数人が練習に加わっており、橘田もその1人だった。

「サッカー部から3~4人駆り出されるのですが、僕も1年、2年の時に年に数回参加しました。大学3年になるとその頻度が増えて、週1に近いペースで参加していた時期もありました。ただ、それはあくまでも練習の補充要員であって、期待の選手として『見られている』感覚が一切なかった。なので僕がフロンターレに入れるなんてまったく思っていませんでしたし、到底考えられませんでした」 練習に参加する度に川崎のレベルの高さに驚かされた。

「同じボランチだと、大島僚太選手は見ている世界が凄すぎる。ボールが来る前に何度も首を振って状況を把握しているし、正直いつ見ているのか分からない時もある。守田英正選手は守備が強いし、自分では絶対にターンしないところをターンするのは衝撃でした。下田北斗選手もキックの質が半端ないし、同い年の田中碧選手は止めて蹴るが正確で、やっぱりレベルがめちゃくちゃ高い。原田虹輝選手も前を向く力があるし、みんなうまいんです。

 そうした選手たちのプレーをずっと『凄いな』と思って見ていて、『自分が入ったら』というイメージは到底できなかった。それに紅白戦になると僕らはあくまで対戦相手を想定した動きをしますし、ポジションもサイドバックやFW、ボランチ、トップ下といろんなポジションに配置されるんです。僕自身も選手たちやチームに迷惑をかけないように、忠実にプレーしたり、普通の練習でも流れを切らさないように緊張しながらやっていました。もう完全に第三者目線でしたね。練習終わって帰る時に、『次元が違いすぎる』と参加したチームメイトと話しながら帰っていました」

【次ページ】 「俺の名前を覚えてくれているんだ」

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