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「1番を取って帰ってきたい」
五輪確定へ17歳のテイクオフ。
~プロサーファー松田詩野の自信~
posted2020/06/21 18:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
前例のない困難の中で、17歳の女子高校生プロサーファーは瑞々しい人生観をはぐくみ、毅然と前を見つめていた。サーフィンの東京五輪代表に条件付きで内定している松田詩野が、国際サーフィン連盟(ISA)が代表に関する権利を維持すると発表したことを受けて、このほど合同リモート取材に応じた。
「ISAからはメールで知らせを受けました。東京五輪に対する思いは変わりません。五輪が1年延期になったことで周りもすごくレベルアップすると思うので、自信を持って戦えるレベルになるように練習したい」。表情を引き締めて言った。
3月上旬にオーストラリアでの試合に出たのを最後にツアーが中止。中2でプロに転向して以来、世界の大海原を鍛錬の場としてきた松田も、日本にとどまり、練習がままならない状況に直面することになった。長く続いた「ステイホーム」を求められる日々。ふんだんにできた時間の中で、松田はこう考えた。
「今まで通りの生活をできないことも多いですが、私が思ったのはこういう状況ではネガティブな人は置いて行かれるということ。大変な状況でこそ、ポジティブでいることがすごく大事だと感じました」
3月中旬以降は、年始に掲げた「心技体すべてをバランス良く鍛える」ことを軸に、ランニングや体幹トレーニングに集中。さらに、海外勢とのコミュニケーションの面でも不自由をなくしたいという思いから、以前から取り組んでいる英会話のオンライン授業に一層力を入れた。「小さいことでも自信につながると思う」と、ひたすら前向きだ。
「東京五輪はメダルを争う戦いになる」
次の目標は年内にエルサルバドルで開催が予定されているワールドゲームス(世界選手権に相当)で日本人2位以内になり、東京五輪出場権を確定させることだ。「1番を取って帰ってきたい」と意気込む。
昨年は9月に宮崎県で行なわれたワールドゲームスでアジア最上位になり、東京五輪の条件付き内定を手中に収めたが、それ以降は思うような成績を残せなかった。
「あの悔しさがあって、頑張れています。東京五輪はメダルを争う戦いになります。笑顔で臨んで、笑顔で終われる五輪にしたいです」
どんな波でも乗りこなしていきそうなたくましさが浮かんでいた。