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それでも選手はプレーしたい……。
米女子ゴルフ3部ツアーが開催中のわけ。
posted2020/04/21 07:00
text by
南しずかShizuka Minami
photograph by
Shizuka Minami
3月下旬、ある晴れた日のお昼ごろ。アリゾナ州ムーンバレーCCの1番で、ヘイリー・ムーア(米国)がティーショットを放った。身長約180cmのパワーヒッターの打球はフェアウェイを難なく捉えた。
「ちょっとスイング弱いんじゃないのー!?」
ティーオフ前に選手名を読み上げた中年男性が、ムーアをからかった。だが、軽快なジョークに反応する観客はいない。それどころか、選手を応援するファンも、スコアボード係のボランティアもいない。
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なぜなら、ここは「カクタスツアー(米女子3部ツアー/カクタス=サボテン)」だからである。
通常、プロ志望の女子大生ゴルファーやプロになりたての若手の主戦場である。先立つ資金がない若者の懐事情をふまえて、全ての試合はアリゾナ州周辺で行われる。キャディ費を節約して1人でラウンドできるように、試合中のゴルフ用距離測定器の使用も可能だ。
州知事も認めたゴルフのプレー。
「この非常時に、試合をする必要ないでしょ!」
新型コロナウイルスの影響で世界中の主なゴルフツアーが一時中断してる最中、いまだに行なわれているカクタスツアーに対し、SNS上では批判の声も上がっている。
開催している理由は、アリゾナ州の感染者数がニューヨーク州やカリフォルニア州に比べて少なく、また感染拡大のスピードが遅いことが挙げられる。
アリゾナ州は、アメリカ南西部に位置し、面積29万5300平方km、人口約730万人である。日本全体から北海道を除いた面積に埼玉県民の総人口が暮らしているような感じだ。
人口密度が低いことで、濃厚接触の割合も都市部より少なく、アリゾナ州知事は4月1日に外出禁止令を発令した際、食料品や日用品の買い出しや薬局の営業などに加えてゴルフも「Essential Activities (不可欠な活動)」に含めた。
州知事のお墨付きなので、むやみにツアーを中断する理由はないわけだ。