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謎の新システムに、“そっくりさん”。
F1開幕前テストの意外な話題たち。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2020/03/08 19:00
レーシングポイントの新車RP20。 昨年のメルセデスW10と比べてもらうとわかるが、ノーズなどの形状が酷似している。
他のチームの導入は非現実的。
メルセデスが賢いのは、レギュレーションが変更される2021年以降はこのアイディアを使用できないことを知りつつ、今年このタイミングで投入してきたことだ。一部では、今からこのシステムの開発を始めても実用化までに半年はかかるという声がある。
つまり、ライバルチームがもしこれに追随するなら、わずか半年のために巨額の開発費を投じなければならない。メルセデスのそのしたたかさにライバルたちは地団駄を踏むしかなかった。
過去6年間F1界を席巻し続けてなお、機先を制しようというメルセデスは、6日間のテストでもトップタイムをマーク。今シーズンもタイトル争いの中心にいることは間違いないだろう。
F1のコンセプトに著作権はない。
メルセデス以外に、もうひとつ注目が集まったのがレーシングポイントだった。カタロニア・サーキットで初めて公に登場した新車「RP20」の外見が、昨年のチャンピオンマシンであるメルセデスW10に酷似していたのだ。
そのため、テスト期間にはライバルたちが「メルセデスのコピーマシン」、「ピンク・メルセデス」と揶揄した。
だが、レーシングポイントのテクニカルディレクターを務めるアンディ・グリーンは、次のように反論する。
「確かにわれわれはマシンの哲学を変え、メルセデスと同様のコンセプトを採用した。この世界で速いマシンからアイディアを得ることは今に始まったことではない。メルセデスと同じコンセプトにしたが、図面や開発のデータは共有していない。レギュレーションに則って、われわれは自分たちでマシンをデザインし、製造した」
グリーンが言うようにF1には著作権はなく、ライバルチームの長所を模倣しても、自分たちで設計・製造していれば違法とはならない。