ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
「10年後……どうなってるんだろう」
石川遼の焦燥、PGAツアー2戦を経て。
posted2020/03/04 11:40
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
四六時中、100%で、ゲームに集中できたかといえば、そうではなかったのかもしれない。
聞き覚えのあるファンの喧騒、肌を焦がす陽射し、トップを競う緊張感……。石川遼は懐かしい雰囲気に身を任せながらも、時折どこか遠くに視線をやった。
2月、石川は国内ツアーのオフの間に米ツアーにスポット参戦した。前年の賞金ランキング上位者の資格で出たWGCメキシコ選手権、主催者推薦枠に入った米フロリダでのホンダクラシックの2試合。
結果は惨憺たるものだった。メキシコでは72人のうち68位、フロリダではカットラインに遠く10打も及ばず138位で予選落ち。ただ、本人にしてみれば、改めて感じた“世界”との差は数字以上のものがあった。
「あまり言いたくないけれど、今の自分では厳しい。PGAツアーは……」
ホンダクラシックで出遅れた初日のラウンド後、静かにそう言葉を残した。何かを悟ったような表情を添えて。
調子云々ではなく、技術の差。
石川は2013年から'17年までPGAツアーのメンバーとして米国を主戦場にした。昨秋にアジアシリーズ2試合に出たものの、北米でのプレーは年間の出場権を落とした当時以来、2年4カ月ぶり。期待と不安を持って乗り込んだ。
日本ツアーに本格復帰してから2季目の昨年、全選手中トップの3勝を挙げ、賞金ランキングで3位に入った。わずかでも自信が戻ったはずだった。その結果が今回の惨敗。そこには“調子の波”云々ではない、歴然とした技術不足を感じたという。
「ロングゲームで圧倒的な差がある。40ヤードから300ヤード以上のショット技術の次元が違う。弾道を見ていると分かるんです。やっぱり彼らが打っている球、ミスの傾向も日本でやっている選手のものじゃない。きょう、あしたでどうにかできることでもない」
350ヤードのスーパードライブも、1メートルのパットもゴルフにおいては同じ1打ではある。だがその積み重ねが最終的なスコアとしてキャリアを左右する。石川は巧みなアプローチをはじめとしたショートゲームに自信がある一方で、そこに至るまでのルートの違いに溜息を漏らす。パワーも、方向性も。