開幕までの目標は、2キロアップ。

　その椅子に座るべく、森原が開幕へ向け目標に掲げるのが「全球種のアベレージを2キロアップさせる」ことだ。

「不可能な数字ではない」と、彼は言う。

　根拠はある。まず、投手にとって生命線である投球フォームが安定していることだ。左足を上げてから地面に踏み出すまでの重心移動、「横の動き」を十分に作ることで、ボールをリリースするまでの時間を長くできる。そのことが、打者のタイミングを取りづらくすることにも繋がるわけだが、森原は「ゆったりとしたリズムでバランスよく投げられている」と、自身のフォームに手応えを掴む。

　そしてこの1、2年、森原が重点的に行う“瞬発持久力”のトレーニングが、パフォーマンスに直結していることも大きい。

　連投が求められる中継ぎは、筋肉の瞬発力と、それを持続させる持久力が不可欠となる。なかでも「ボックスジャンプ」と呼ばれる、1メートルほどの高さのある箱に、反動をつけず飛び乗る練習が効果的なのだという。

　それらメニューを自主トレから徹底し、シーズンでも定期的に取り入れることで、シーズンを投げ切れる体が養えるはず。そう確信を抱くからこそ、森原は「全球種のアベレージ2キロアップ」の実現を疑っていないわけだ。

「自分、伸びしろあるなって」

　昨季終了後に、森原が自信ありげな表情で話していたことを思い出す。

「自分、伸びしろあるなって。ピーク、まだまだ先だと思っているんですよ」

　有言実行。上昇する成長曲線を証明する戦いが、間もなく始まる。

　まだ見慣れぬ、背番号「13」と9回のマウンドに立つ姿。守護神として登板を積み重ねられれば、それはやがて払拭されるはずだ。

「あっ！ 森原、来た!!」

　楽天生命パーク宮城が沸く。幾多の想いを背負い、森原は右腕を振り下ろす。