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<引退記念インタビュー>
豪栄道「“やせ我慢”の美学を胸に」
posted2020/02/24 11:30
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Manami Takahashi
どんな苦境にも決して弱音を吐かず、戦い続けた。惜しまれつつ15年間の土俵生活に別れを告げた名大関が、全勝優勝から9度に渡るカド番まで、激動の相撲人生を独白した。(Number997号掲載)
引退会見では泣かないように我慢していましたけど、実は、ひとりの時は号泣しているんです(笑)。いろいろ思い出したり、ネットの記事でいろんな人のコメントを見たり、ねぎらいのメールをもらったり――。ひとりになると泣いてしまうんですよね。もともと人前では泣けないタイプなんですが、それこそ引退会見の場で泣いてしまうと、「なんで後悔してんねん?」と思われそうでしたから。でも、本当はグッと来てました。会見中にうちの床山さんが泣いてるのが目に入り、泣きそうになってしまったんで、ずっと遠くの方を見つめていました。同席してくれていた師匠の顔を見ても泣いてしまいそうで、極力、横を見ないようにしていましたし。師匠が「ケガで苦労したが“やせ我慢の美学”を持っていた男」と僕のことを評してくださったんです。確かに度重なる故障はありましたけど、裸でぶつかり合うんですから、ケガも当たり前だと思っていました。そもそも「『痛い』と言ったところでどうなる?」と思うんです。ケガしたことを口にしたって勝負に勝てないし、治らない。言い訳になる。後から「実はケガしていた」とマスコミに話したとしても、「ダサッ! カッコ悪っ!」と思って、自己嫌悪に陥るだけですから。