濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
デビュー7連勝も悔し涙の負けず嫌い。
新鋭・ぱんちゃん璃奈の可能性は?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2020/02/14 20:00
祥子戦直後のぱんちゃん璃奈。ローキックを効果的に使い、離れても、接近戦でも強さを見せた。
プロの戦いの難しさを、どう越えるか?
2.11大田区大会、プロ7戦目は祥子JSKと対戦した。ぱんちゃんの希望によるリマッチだ。
昨年8月の初戦もぱんちゃんが判定で勝っているのだが、ジャッジ1人はドローの採点。思うように闘えず、プロの難しさを味わった。
そんな相手を圧倒し、成長を見せて次のステップに進むことが今回のテーマだった。
キックボクシングは生きている証。
結果は3-0の判定勝利。
「この半年で一番よくなった技」だというローキックでダメージを与え、前回よりも明確な差をつけた。ただそこからダウン、KOにつなげることができない。倒そうとするあまり、心も体も前のめりになりすぎていた。
「相手の足しか見えなくなっちゃって」とぱんちゃん。
「何度、同じことを繰り返すんですかね。練習でできている動きが試合で出せない。メンタルが弱いのかなぁ。なんなんだろう」
苦笑しながら涙があふれる。
師匠である鈴木秀明会長の言葉を借りれば「素人から始めて、まだプロデビュー1年」の選手が7連勝しただけでも立派なことなのだが、本人はとにかく内容が気に入らなかった。
「勝つのは当たり前で、いい勝ち方をしないとトップ選手にはなれない。今でも獲れるベルトがあるかもしれないですが、でも私は圧倒して勝つ選手、相手の心を折るような選手になりたい」
プロで勝つことが目標ではないのだと、ぱんちゃんははっきり言う。
「理想は自分でも高いと思います。キックの選手になろうと決めた時、家族からは無理だって言われたんです。でも自分だけはトップになると信じてきたので」
なぜなら、彼女にとってキックボクシングが生きている証だからだ。
「それまでは本当に人生がつまらなくて。キックボクシングに出会って初めて、生きてる感じがしたんです。キックに救われたというか。甘い世界じゃないのは分かっているからこそ、そこでトップになれたら、やっと自分に自信が持てるかなって」