濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
デスマッチ選手が救急搬送も……。
米団体GCW“狂気の宴”に喝采やまず!
posted2020/02/06 19:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Yumi Murakami
プロレスラーのキャリアはケガとの闘いだ。観客に見せるための“スポーツ・エンターテインメント”は、選手が体を酷使することで成り立つ。
攻防の中での負傷によって、不本意な形で試合を終えた選手は何人もいる。試合会場から病院に直行した者、救急車で運ばれた者も。
2月3日には、竹田誠志が「新木場1st RING」の会場から救急搬送された。アメリカのデスマッチ団体GCW(Game Changer Wrestling)のジャパンツアー3daysの初日、そのメインイベントだった。
自ら持ち込んだ“包丁ボード(木の板に固定用の発泡スチロールを張り、そこに包丁を並べた凶器)”の上にサイドバスターで投げられ、背中とヒジに大きな裂傷を負ったのだ。レフェリーは即座に試合をストップした。病院で50針縫った竹田は痛みで歩行困難となり、6日まで入院することとなった。
セコンドに傷口をタオルで抑えられながら「俺はギブアップしちゃいねえ!」と再戦をアピールし、控室から救急車まで歩いて向かったのは“さすが”だった。ただ、こんな光景を見たいとは誰も思っていなかった。
「デスマッチ廃止」の暴論に見る誤解。
SNSでこの様子が伝えられると、試合を見ていない者も含めて大騒ぎになった。
デスマッチの過激化を危惧する声は多く、あるレスラーは「もうデスマッチは廃止でいいよ」とまでツイッターに書いていた。「死なないデスマッチを見せるべき」であり「本当に死ぬかもしれないデスマッチをファンは見たいのか?」と。
こう意見した選手が誰なのかは書かない。暴論、極論でマット界の話題に“参戦”、平たく言えば“いっちょかみ”したいだけのような気がするからだ。ただこの意見にはデスマッチへの誤解と偏見が詰まっており、その意味で格好の題材になる。
断言していいが、死のうと思ってデスマッチをしている選手などいない。
プロレスは“不文律”の世界だ。ルールには書いていないがケガをしても、させてもいけない。自分の足でリングを降り、明日またどこかで待っているファンのためにリングに上がる。それがレスラーのプライドなのだ。