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アフリカの小国・ジブチが起こした
サッカーW杯一次予選突破の奇跡!
posted2020/01/14 08:00
text by
フランク・シモンFrank Simon
photograph by
Alexis Reau/L'Equipe
ソマリアとエチオピア、エリトリアに囲まれたアフリカ東岸の小国ジブチ(人口約90万人、九州の3分の2程の国土面積)は、FIFAランキングでも184位に位置するにすぎない。ところがその小国が、カタールW杯アフリカ予備(一次)予選を突破してしまった。いったいジブチで何が起こっているのか……。
フランク・シモン記者が『フランス・フットボール』誌2019年11月26日号でレポートするのは、若きフランス人代表監督のもと、ジブチが8月にパリ近郊でおこなった代表選抜トライアウトの様子である。
監修:田村修一
欧州各地から続々集まってきたジブチ人選手。
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2018年8月、まだ37歳にしかならない若きジブチ代表監督ジュリアン・メットがフェイスブックにアップしたそのメッセージは、まるで大海原を漂いながら届いた小瓶の中の手紙のようだった。
その直後、代表選手を募集するという告知に反応し、故国を離れてヨーロッパに在住しながらトライアウトへの参加を希望する数十人のジブチ人たちから、彼らのメッセージが監督のもとに続々と届いたのであった。それから数日後、トライアウトはパリ近郊オート・ド・セーヌ県のアマチュアクラブ「ラ・ガレンヌ・コロンブ」のグラウンドでおこなわれた。
そこに集まったのは15歳から32歳までの、ジブチ代表チーム入りを夢見る選手たちだった。
地方から長距離バスで駆けつけたものたちの中には、オランダから参加した若者もいた。アブドゥリザクとアブディライのマコウ兄弟は、元代表である父親とともにスウェーデンから飛行機でやってきた。すでにジブチでは名が知られた若きGKのアブラルも、監督にさらなる好印象を与えるために祖国からの参加を躊躇わなかった。
彼らとともに、前代未聞ともいえるトライアウトが始まった。
ジブチ代表監督のメットが事情を説明する。
「レベルのよくわからない選手たちをわざわざジブチまで呼ぶよりはずっといいだろう。費用だってパリでやった方がずっと安く済む」