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青学・吉田祐也の区間新と陸上卒業。
「原監督を見返したい」から感謝へ。 

text by

小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byYuki Suenaga

posted2020/01/04 11:45

青学・吉田祐也の区間新と陸上卒業。「原監督を見返したい」から感謝へ。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

青山学院大で4年間努力を続け、これが陸上生活の最後と見定めた箱根駅伝で区間新。吉田祐也はたしかにヒーローだった。

陸上を始めたのは、好きな子の一言。

 前回の全日本は5区を走り区間賞を獲得。それだけの結果を残してなお、箱根で起用されることはなかった。2年続けて10区の控えに回されれば、気持ちの面で腐ってもおかしくはない。だが、吉田はその選択を良しとはしなかった。なぜだろう?

「絶対に箱根を走って、監督を見返したいって。それが一番大きかったです」

 もともとエリート街道を歩んできたわけではない。中学も高校も全国的には無名。青学大の陸上競技部に入部したときも、「下から数えて4番目の実力でしかなかった」。強い先輩がいて、有力な後輩が次々入部してくる中、それでもぶれずに努力を続けたのは、それこそが自身の持ち味であると認識していたからだ。

「自分に何ができるかと言えば努力することしかなくて。ないものをねだるよりも、あるものをうまく生かそうと思ってここまで来ました。今年に関して言えば、監督に止められるくらい練習も積めた。間違った方向には進んでいないという確信があったので、これまで黙々とやってこられたんだと思います」

 小学3年生の持久走でビリから3番目になったのが、陸上を始める切っ掛けだった。当時、好意を寄せていた女の子が「足の速い男の子が好き」と話しているのを聞き、一念発起して走り始めた。その彼女が今回の走りを見て連絡をくれました、とややはにかんだ様子で話す。

「昨日の走りを見てくれたみたいで、彼女からLINEをもらいました。(付き合ってるの?)そういうわけではないですけど、嬉しかったです(笑)」

陸上は「なんの後悔もなく卒業」。

 これといった特技のなかった少年が、こつこつと努力を重ねてその才能を伸ばしていく。まるで王道のスポーツ漫画に出てくる主人公のようだが、当人の話だからこそ説得力がある。競技人生のクライマックスにすべての長距離学生ランナーの憧れである箱根駅伝で、最高の結果を出す辺りもまさにヒーロー級だ。

 これだけの走りを見せられると、つい今後の活躍についても期待したくなるが、吉田はそれをきっぱりと否定した。

「高校の頃から競技人生は大学で終わりと思ってやってきて、タイムリミットがある中で目標を決めて最後まで出し切る努力をしてきました。先ほども言いましたが、本当に精一杯の走りができたので、なんの後悔もなく卒業できそうです」

【次ページ】 「監督を超える営業マンになりたいです(笑)」

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