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変化した強さを見せる日本体育大学。
明治大学の大黒柱は復活なるか。 

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箱根駅伝2020取材チーム

箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020

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photograph byShigeki Yamamoto / Yuki Suenaga

posted2019/12/11 11:00

変化した強さを見せる日本体育大学。明治大学の大黒柱は復活なるか。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto / Yuki Suenaga

エース山口の心に残る6年前の記憶。

 山口を含めて、箱根駅伝経験を持つ計7人の3年、4年生たちの刺激になり、相乗効果を生んでいる。小野木コーチを中心に取り組んでいるスピード強化も実を結び、前回10区を走った中川翔太(4年)を筆頭にトラックでは5000mで13分台を出す選手が増えた。失いかけた自信が戻ってきている。

 4年生のエースは、幼い頃から見てきた強かった日体大をふと思い返す。6年前にテレビで見た第89回箱根駅伝は、いまでも鮮明に記憶に残る。前年度の19位から頂点まで駆け上がった10人のたすきリレーに胸を打たれた。最も衝撃を受けたのは、山上りの5区で区間賞を獲得した服部翔大(現Honda)の力走だ。30年ぶり10度目の総合優勝に導く圧巻の走りだった。

「すごかったですよね。あれを見て、僕も箱根の山を上りたいと思いましたから。当時はまだ中学生でしたが、5区に憧れました」

 前回2区を走った山口は、懐かしそうに笑う。

「スタートから怖気づかずに攻めて」

「いまは山を走りたいと思わないですけど」と冗談交じりに話すが、箱根路への思いは変わらない。陸上競技の中距離選手だった日体大OBである父親の影響で物心がついた頃から大学駅伝を観戦し、親子そろってずっと同じ大学を応援してきた。特別な思いを抱く白いたすきをかけるのも今回が最後。大黒柱として、学生トップランナーの集う区間で戦う覚悟は相当なもの。かつて憧れた日体大のエースを引き合いに出し、花の2区で流れを引き寄せることを誓う。

「僕がやらないといけません。爆発的な走りはできませんが、他大学のエースに負けたくない。留学生にも食らいついていきます」

 3年時は留学生を完全に無視したが、今回は視野に入れながらタイムを刻んでいくつもりだ。区間順位は日本人5位以内を目指す。最終学年となり、持ち前の粘りに加えて、勝負強さが増してきた。今季は5000mで13分台を出し、自信もつけた。スピードで勝負するタイプではないが、走りには気持ちがみなぎる。距離には強い。全日本大学駅伝では17.6kmの7区で3人を抜き、区間4位と奮起。駅伝での強さは、持ちタイムでは測れないものもある。

「スタートから怖気づかずに攻めていきます」

 憧れ続けてきた強い日体大のエースとして、その名に恥じない走りを見せる。

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