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16歳の天才少女が東京五輪急浮上。
“03line”クライマー、森秋彩の欲の形。 

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森山憲一

森山憲一Kenichi Moriyama

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photograph byKenichi Moriyama

posted2019/11/27 18:00

16歳の天才少女が東京五輪急浮上。“03line”クライマー、森秋彩の欲の形。<Number Web> photograph by Kenichi Moriyama

8月に東京・八王子で開催された世界選手権で、リード種目では3位となった森秋彩。

2003年生まれの才能が世界を席巻。

 現在の女子スポーツクライミング界には、東京オリンピック金メダル大本命のヤーニャ・ガンブレット(スロベニア)という女王が君臨している。ところが2019年のリード種目で異変が起きた。常勝ガンブレットがワールドカップでは初戦しか勝つことができず、年間ランキングでも2位に終わった。

 ガンブレットにストップをかけた立役者が、日中韓の“03line”、すなわち2003年生まれの若いクライマーたち。韓国のソ・チェヒョン、中国のツァン・ユートン、日本の谷井菜月、そして森。この4人が異変の主役だ。以前から天才少女として注目されていた森は、この世代を代表するひとりである。

 森の世界大会への参戦は今年2019年からだが、国内の大会では、第一人者の野口啓代や、1歳年上で昨年からワールドカップで活躍していた伊藤ふたばなどに勝つこともしばしばで、実力的には彼女らトップ層と肩を並べるものを持っていると見られていた。

 今年、その実力は世界でも通用することを証明したというわけだ。

「世界を舞台にどこまで自分ができるかわからなかったんですけど、世界選手権で自信が付きました。今の自分でも世界のトップと戦えるんだなって」

 それまでは、東京オリンピックは自分にはまだ早い、勝負は次の2024年パリ・オリンピックと考えていた森だが、ワールドカップと世界選手権で手応えを得て、考えが変わったという。

「ここまできたら、東京もねらうしかない」と。

世界大会参戦1年目で年間6位。

 森の今年の活躍は、5月に中国・呉江で開催されたワールドカップから始まった。ワールドカップ参戦3戦目でいきなり3位に入賞。しかも、リードに比べて苦手としているボルダリングで、昨年の年間ランキング1位の野中生萌をも上回っての3位だった。

 7月から始まったリード・ワールドカップでは、初戦3位、第2戦4位と、安定して上位をキープ。その勢いをもって乗り込んだ世界選手権で、冒頭のような劇的なクライミングを見せた。9月には、公式戦ではないが、ドイツで開かれた有力選手の招待コンペでも3位に入った。

 その後はミスが続いてやや精彩を欠き、3位をほぼ確実にしていたリードの年間ランキングは最終戦で逆転を許して6位に終わったが、世界大会参戦1年目の成績としては十分といえるもの。オリンピック代表候補にもなり、野口啓代、野中生萌に次ぐ国内3番目の座を確実にしたシーズンだった。

【次ページ】 154cmで小柄、面影はまだ幼い。

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