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浅村栄斗の移籍1年目は雨のち晴れ。
最終盤の絶好調を導いた、ある練習。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byAFLO
posted2019/11/23 20:00
プレミア12で優勝した日本代表でも、浅村栄斗はクリーンナップを担った。
復調し、プレミアでも活躍したが……。
部坂が言う「いつもの浅村に戻った」シーズン残り10試合。復調は数字が物語っていた。35打数12安打、打率3割4分3厘。ソフトバンクとのクライマックスシリーズ(CS)では、ファーストステージ最多の4本塁打を含む12打数6安打7打点と、チームが敗れた中でも気を吐いた。
その好調をプレミア12でも維持し、日本の世界一奪還に欠かせない、重要なピースとして機能した。
楽天では最終盤で自分の打撃を取り戻し、日本代表としても世界一で締めくくった。結果としては悪くはない2019年だった。
苦しい時期の乗り越え方を知って。
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だが、浅村は不調だった時期の自分を直視する。
「今までにないくらい苦しかった」
そう位置付けていた。
「今までやってきたことがなかなかできない。苦しい時期をどう脱していいかもわからなかった。試合ではファンがすごい声援を贈ってくれて本当にありがたかったけど、それがプレッシャーにもなったし、苦しかった。『これが移籍したことの難しさかな?』って感じながら、本当の自分を見せられないなかシーズンが終わってしまいました」
言うなれば、浅村は過度な期待を背負い、結果を残せないことの怖さを知った。初めての経験に困惑し、技術面と精神面で苦しみながらも現実を受け入れ、最終的には自力で窮地を脱した。
そんな男の言葉が蘇る。
「個人としては悪いシーズンでした。それが分かれただけでもよかったかな、と。今後に必ず生きてくるんでね」
もう、怖くはない。楽天で、プレミア12での試合でも球場を支配した声援――叩き込め!
来季の量産の兆しは、すでに見えている。