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高3で体操シニア初タイトル獲得!
戦略や理想、橋本大輝の5つの凄さ。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byYUTAKA/AFLO SPORTS
posted2019/11/16 20:00
10月の世界選手権では日本代表チームの最年少として初出場。団体ではあん馬、跳馬、鉄棒、ゆかの4種目に出場し銅メダルに貢献した。
その3:世界の頂点との具体的な距離感をつかんでいる。
堂々のシニア初タイトル。しかし、橋本は結果を淡々と受け止めている。
「今回は世界選手権の後で、調子の悪い人もいます。その中で自分が良かったというだけです。みんなが万全の状態でも勝てるようになりたいと思いました」
1人だけ86点台に乗せたことについて聞かれても、すぐに世界選手権男子個人総合のメダリストの点と比較してこう言った。金メダルのニキータ・ナゴルニー(ロシア)は88.772点。銀メダルのアルトゥール・ダラロヤン(同)は87.165点である。
「世界で戦っていく中では、少なくともあと1点が必要。来年のW杯では87点台の中盤をとっていきたいです」
86点から87.5点まで1.5点を上乗せするためのプランもすでに持っている。
「Dスコアをあと0.5点上げて、その後完成度で1点上げればピッタリ87点台半ばまでいく。1.5点上げるのは大変だと思うが、やっていかないといけない、Dスコアはあん馬、つり輪、平行棒、鉄棒で上げたいと思っています」
その4:切り替え力がすごい。
ところで、スーパーファイナルのあん馬で予定していた技を入れられなかったときはどう感じていたのだろうか。
「悔しかったけど、練習でも2回しか通らなかったので、これも当然の結果だと自分の中でスッと受け入れることができた。その後切り替えて全種目できたのが良かった」
実は、5種目を終えたときに、「点数を気にすると自分の演技をできないから」と見ないつもりでいた順位と点数を見てしまったそうだ。順位は5位。トップとの差は0.667点。
「見たら5位だったので、どうせ勝てるか分からないなら思い切り攻めるしかないと思った。それがこの順位につながった」
切り替える強さも開き直れる強さも橋本は持っている。大竹コーチは「世界選手権から帰国した後は、手首や腰など痛いところもあったので、やりたくてもできないと思い悩むこともあったと思います。でも、どんな窮地になっても前向きな気持ちが出てくるのが彼の良さ」と目を細める。