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先輩の教えを胸に、コツコツと。
西武残留の十亀剣が誓う日本一。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2019/11/15 11:30
西武残留を決めた十亀剣。2年連続で逃した日本シリーズ進出をかなえるべく、新たなスタートを切った。
自主トレで交わした野球議論。
十亀は振り返る。
「本当にたくさん、いろいろお話をさせていただいたんですが、まず最初に驚いたのはトレーニングに対する考え方でした。館山さんは『トレーニングはケガをしないためにするもの』だというんです。僕はそれを聞くまで、体を強く、大きくするためにトレーニングをしていたんですけど、館山さんの話を聞いて『そういう考え方もあるんだな』とトレーニング方法を見つめなおしました」
自主トレーニング期間には、野球についてさまざまな議論を交わした。投球術はもちろん、マウンド上でのメンタルコントロールの方法。技術論も多かった。
「中でも変化球の考え方が衝撃でした。僕は、変化球については、こういう回転をするから落ちるとか、曲がるくらいにしか考えていなかったんですが、館山さんは『ボールの回転軸を意識して投げている』と言うんです」
「そこまで考えて投げてるんだ」
投手は思い通りのボールが投げられないと、どうしてもフォームに意識が行きがちで、投げ込みを行う際も足の挙げ方やステップの位置、腰の回転など、フォームのどこかに原因があるのではないかと考える傾向にある。しかし館山は目の付け所が違った。
「ストレートはボールの回転軸がブレなければスーっと伸びる。変化球も、ボール自体の回転軸がブレなければ、曲がる。そう言われて考えてみると、変化球が抜けてしまうときって、いびつな回転をしている感じがあるんです。『ボールの軸を意識して投げることで安定して、いい回転で投げられるよ』とおっしゃっていて、すごいな、そこまで考えて投げてるんだって驚きましたね」
何事にも研究者のような姿勢で臨んでいたと振り返る。