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世界最高峰の妙技が千葉で堪能できる!
「W杯リード印西大会」の見どころ。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byIchiro Tsugane
posted2019/10/23 11:00
森秋彩は女王に劣らない好調ぶり。
こうした日本勢のなかで最初に注目したいのが、今夏の世界選手権リードで銅メダルを獲得した森秋彩だ。
今季からW杯に出場できる年齢に達した森秋彩は、W杯リード開幕戦で3位表彰台に立つと、世界選手権ではリード単種目の銅メダルを獲得。コンバインドのリードでも、世界選手権のリード、ボルダリング、コンバインドの三冠を達成した女王ヤーニャ・ガンブレットに一歩も譲らないパフォーマンスを見せた。
W杯リード開幕を控えた森秋彩は、ヤーニャ・ガンブレットに対して「できないムーブはないし、持久力も保持力も私よりすごくあって。実力の差はすごいあるので近づけるようになりたいです」と、畏敬の念を表していた。しかし、世界選手権後は「今年中にできれば一度は勝ちたいなって思っています」に変化。世界選手権で手にした大きな自信によって、女王を畏怖するだけではなく、超えたい存在として見られるようになったようだ。
ただ、そう容易く勝たせてくれる相手ではない。世界選手権で中断していたW杯リードは、9月下旬に女王のお膝元であるスロベニアで再開されたが、ヤーニャ・ガンブレットはまさかの準決勝敗退。それでも、この敗退は世界選手権での目標達成で緩んでいたタガを締め直すきっかけになったようだ。「結果は悪かったけど、次につながる光明はあった。残りの大会は注目して!」と意欲を燃やしている。
この第4戦で優勝したのは、森秋彩と同じ2003年生まれのソ・チェヒョン(韓国)。今季W杯リードで3勝目を手にし、W杯ランクでも1位に立った。彼女の存在もまた、森をさらなる高みへと向かわせるモチベーションになっている。
リアル・ロッククライマー田嶋あいかも参戦。
スポーツクライミングが東京五輪の実施種目になり、競技と岩場の乖離が顕著になっているなか、現在は岩場に軸足を置く田嶋あいかが、競技でどういうパフォーマンスを発揮するのかも見逃せない。
中学時代からリードとボルダリングで国内トップの道を歩み、高校1年で臨んだ2015年のボルダリング・ジャパンカップでは、野口啓代の10連覇を阻止して初優勝。大学受験を機に競技から距離を置き、現在は慶應大に通いながら岩場をメインに活動する。ただ、そうしたスタンスにあってもW杯リードには昨年も出場し、最終戦で決勝に進出して8位。これは春に腕を骨折して夏まで満足なトレーニングができないなかでの結果だった。
岩場にフォーカスしながら競技にも参戦するという、ひと昔前のクライマーのスタイルを踏襲する田嶋が、競技に特化するクライミング・アスリートや、競技色の色濃いW杯リードの課題と対峙して、どんな成績を残すのか。そのパフォーマンスの向こう側に、競技と岩場の違いなどが垣間見えるかもしれない。