沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
新スプリント王者は世界的な名血統。
ルメールは最高の気分で凱旋門賞へ。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2019/09/30 11:40
中山の直線は短いが、タワーオブロンドンとルメールの手にかかればピッタリ届いたところがゴールだった。
凱旋門賞に向かう最高の景気づけに。
「札幌からどんどん状態がよくなっている。スプリントレースの経験を積んで、パワーアップして、タフになっている。彼のリミットはまだわからない。また大きなレースを勝つと思います」
セントウルステークスから中2週という厳しいローテーションだったにもかかわらず、その影響をまったく感じさせなかった。
「ぼくは今日から(凱旋門賞に参戦するため)フランスに行きます。飛行機のなかでゆっくり眠れそうです」
ルメールはそう言って、報道陣を笑わせた。
藤沢調教師にとって、スプリンターズステークスは1997年のタイキシャトル以来22年ぶりの2勝目となった。このままスプリント路線に集中するのか、それとも、マイルチャンピオンシップや仏ジャックルマロワ賞などマイルのGIも制したタイキシャトルと同じように、距離に幅のある路線に進むのだろうか。
「ルメールの言っていたとおり、1200mでしたね。本人には1600mまで持たせろ、と言います」
笑顔で藤沢調教師が言った「本人」というのはタワーオブロンドンのことか。
タワーオブロンドンの祖母は実は……。
タワーオブロンドンはダーレージャパンの生産馬で、馬主はゴドルフィン。母スノーパインは英国産だ。
しかしその母、つまり、タワーオブロンドンの祖母シンコウエルメスは、藤沢調教師が管理した馬だった。そこに質問が及ぶと、同師は少し言葉を詰まらせたように見えた。
「シンコウエルメスは、25年前にアイルランドから来た馬です。事故にあって競走生活をつづけられなくなりましたが、長い間お世話になりました。感謝しています。ありがとう、と言いたいです」