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1イニングで終わった世界デビュー。
佐々木朗希が自己主張したあの瞬間。

posted2019/09/18 07:00

 
1イニングで終わった世界デビュー。佐々木朗希が自己主張したあの瞬間。<Number Web> photograph by AFLO

佐々木朗希にとっては不完全燃焼となったU-18ワールドカップ。しかし彼のピークはずっと先にあるはずだ。

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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AFLO

 最速163キロ右腕、佐々木朗希(大船渡)の世界デビューは、1イニングで終わった。

 8月30日から9月8日まで韓国で開催されたU-18ベースボールワールドカップ。佐々木は6日の韓国戦に先発登板したが、1回裏を投げ終えたところで無念の降板となった。

 佐々木は8月26日に行われた大学日本代表との壮行試合で右手中指にまめを作り、ノースロー調整が続いていた。それでも、当初の見込みよりも回復スピードが早く、30日にキャッチボールを再開し、9月2日の試合中には壮行試合以来1週間ぶりにブルペンで投球した。

 ブルペンの周りに集まった大勢のカメラマンや記者、スカウト、そして観客から、思わず「うわ」とため息が漏れる。

「ちょ水上、早く帰ってきて!」

 190センチの長身から投げおろされるストレートが、あっという間に捕手の水上桂(明石商)のミットに吸い込まれる。水上は、「イッテー! まじで痛い!」と嬉しそうに悲鳴をあげた。

「あぶねー! 親指取れるかと思った」

「指が腫れて太くなってる」

「ちょっと親指休憩していいすかー?」

 もれ聞こえてくる水上の独り言からも、佐々木の球の威力が伝わってくる。

 水上がベンチに呼ばれて一時ブルペンを離れると、投手の西純矢(創志学園)が、「1割(の力)で! 1割で!」と恐る恐る佐々木の相手を務めたが、この時も、「まじで速い」「グローブ壊れる!」「ちょ水上、早く帰ってきて!」と悲鳴が聞こえた。

 そんなことはお構いなしに、佐々木はあり余っていたエネルギーを発散するかのように、投げ続けた。試合後は、まだ「7割ぐらいの力」と振り返った。

 今回のU-18日本代表で佐々木とともにダブルエースと言われた奥川恭伸(星稜)は、自分なりのこだわりがあり、そのこだわりに沿って、捕手への要求もする。

 小学4年から奥川とバッテリーを組んできた捕手で、今回のU-18にも選出された山瀬慎之助(星稜)は、奥川とバッテリーを組むときだけ左膝をついて構える。それは奥川の要望によるものだ。春に行われたU-18の合宿では、智弁和歌山の捕手、東妻純平も同じように、片膝をついてほしいと要望されたと言う。

【次ページ】 佐々木が捕手に要求することはほぼない。

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