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奥川恭伸の準決勝回避を提案する。
「万全の中4日で決勝」という理想。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2019/08/19 12:25

奥川恭伸の準決勝回避を提案する。「万全の中4日で決勝」という理想。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

奥川恭伸が星稜エースであることは揺るぎない。しかし、だからこそ準決勝を回避するという手が光るのだ。

しかし、中京学院大中京も甘くない。

 もっとも、準決勝で対戦する中京学院大中京は一筋縄ではいかない相手だ。

 集中打で一気に試合をひっくり返す打線の印象が強いが、このチームが強いのは試合の流れを変える術を持っていることだ。劣勢の展開になっても、人を替えながら流れを止め、そして、引き寄せていく。

 3回戦で東海大相模、準々決勝では作新学院と近年の優勝校を破っている。特筆すべきが投手交代で、経験豊富な橋本哲也監督がワンポイント起用などを多用して、試合の流れを操っている。

 星稜vs.中京学院大中京による準決勝は、指揮官同士の流れのつかみ合いになるだろう。その中で投手の起用法が勝負を分けそうだが、星稜の林監督はどういう手を打っていくのか。

 林監督に「準決勝を回避すれば、決勝戦を奥川くんは中4日で迎えられる。欲張ってもいいのではないか」と尋ねてみた。

 ちょっとした苦笑いのあと、林監督は冷静にこう語っている。

「相手を分析してからですね。(仙台)育英戦のようにどういうピッチャーだと相手に合うか、他の投手との兼ね合いを考えたいなと思います。準決勝を100%奥川でいくというのは今のところは言えないです」

大会最高の投手が、最高の状態で。

 中4日で万全な奥川が決勝戦の舞台に進めたなら、これ以上にない高揚感が投げる奥川にも、見る側にも生まれるであろう。

「甲子園で見たいのは、165キロを連発する大谷(翔平)くんのようなプレーであって、130キロしか投げられなくなった投手が打たれる姿ではない。ベストパフォーマンスのプレーが人々を感動させるのだと思う」

 そう力説していたのは、元沖縄水産・1991年の甲子園準優勝投手の大野倫さんだった。

 大会で最も注目を集める投手がベストコンディションで決勝に臨む。

 そんな姿を一度くらいは見たいものだ。

 もちろん、それを中京学院大中京が阻止しようとするのも、高校野球の醍醐味である。

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