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佐々木朗希登板回避に、闇営業騒動。
「危機管理」に必要なのは想像力だ。 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byAsami Enomoto

posted2019/08/01 07:00

佐々木朗希登板回避に、闇営業騒動。「危機管理」に必要なのは想像力だ。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

国保陽平監督は試合後、佐々木の登板回避について「私が判断しました」と語った。

なぜ「決勝から逆算」しなかったのか?

 そこで素朴な疑問がある。どうして「決勝から逆算」しなかったのだろう。つまり、前日の準決勝を温存し、強豪の花巻東との決勝戦に備える。もちろん準決勝で敗退する可能性もあるわけだが、決勝よりは「佐々木抜き」で勝つ確率は高かっただろう。もちろん国保監督が「決勝も投げさせるつもりだったが、当日の体調を見てあきらめた」かもしれないし「中盤まで他の投手で持ちこたえて、佐々木投入」というプランを温めていたが、序盤から打ち込まれたために取りやめたのかもしれないが……。

 話を元に戻すと、国保監督は佐々木投手の「未来」を想像したのである。その結果「欠場が最善」だと判断した。危機管理能力を発揮したことになる。ダルビッシュ有など、この判断を礼賛した野球人もいたが、驚きであったり、批判的な声もかなり聞かれた。それは「時代」が変わりつつある今でも、欠場という判断が決して主流ではないことを教えてくれる。

松坂大輔は250球を投げ完投した。

「(自分も)高校野球ファンとしては(甲子園で投げる佐々木を)見たかった。でも体の心配をしてしまう。監督さんも難しい判断だったと思います」

 ダルビッシュのように思ったことを積極的に発信するのではなく、中日の松坂大輔は各方面への配慮をにじませたコメントを発している。自らはPL学園との熱戦で250球を完投し、翌日はリリーフで投げ、決勝戦はノーヒットノーランを演じている。エースなら投げる。それが1998年に全国制覇を本気で狙っている高校の「常識」であった。

 チームメートの大野雄大は、7月23日の広島戦で右ひざに打球を受けながらも続投を強く志願。先発投手の責任として5回まで投げきったが「僕のまねをするべきではないと思っています」と安易に美談にすることに否定的だった。自らの行動と言動が矛盾しているようにも思えるが、自分のことには責任は負えるが、指導者の立場なら選手を守りたいという思いなのだろう。ちなみに、中日の指導者は強く降板を勧めていたし、大野が断るのを説得し、翌日は病院で診察を受けさせている。決して前時代的に「少しくらい痛くても投げろ」などと強要したわけではない。

【次ページ】 小学生でもわかることがわかっていなかった。

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