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慶應高校野球部の独自システム。
大学生が高校生を教え、後に監督に。
text by
田村航平(Number編集部)Kohei Tamura
photograph byManami Takahashi
posted2019/07/30 11:50
3年生部員と森林貴彦監督(右下)。今夏は4回戦で東海大相模に敗れ、2年連続の甲子園出場はならなかった。
高校生が大学を抜けて登下校する。
学生コーチの1人も「森林さんは僕たちに任せてくれるので、責任感とやりがいがあります」と、かつて森林が上田に抱いた印象と同じようなことを口にした。森林も、学生コーチへの信頼は厚い。
「うちの練習は学生コーチでもっているようなものです。大学生の彼らは高校生にとって身近なお兄さんで、野球を教えてくれるのはもちろんのこと、時には家庭教師のように勉強を見てくれたり、大人には話せないような人生相談に乗ってくれたりもする。
日吉キャンパスでは高校生と大学生が同じ空間にいるので、ほかの部活動でも大学生が高校生を教えるという土壌が自然とできているんです」
日吉駅を降りて慶應大の日吉キャンパスに入っていくと、大学の敷地の中に「慶應義塾高等学校」と書かれた白い校舎が並んでいる。高校に門はなく、高校生たちは大学のキャンパスを抜けて登下校していた。
大学生が高校野球を支えるという、垣根のない独特な文化が慶應には根付いている。
Number983号『高校野球が教えてくれた』では、「Enjoy Baseball」を部訓に掲げる慶應義塾高校の練習風景を取材しています。そこには頭髪が坊主ではなく、監督のことを「森林さん」と呼び、ミーティングで選手から意見や質問が飛び交うという、いわゆる高校野球のイメージとは異なる雰囲気がありました。森林監督が目指すスタイルはいったいどのようなものなのか、詳しくは本誌「慶應義塾 Enjoy Baseballの正体」をお読みください。