球体とリズムBACK NUMBER
チェルシー新体制と主力選手の信頼。
「ランパードとともに楽しんでいる」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/23 17:00
ランパード監督とチェルシーのチーム構築は始まったばかり。23日のバルセロナ戦ではどのようなテストを行うのだろうか。
労働の尊さを知る紳士ランパード。
この41歳の元イングランド代表はMFながら、チェルシーのクラブ史上最多得点記録を持っている。プレミアリーグを3度、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグを1度ずつ制した勝者でもある。
ただし現役の頃から、強烈なミドルや美しい軌道のロングフィードは別にして、特別に派手な印象はない。
自陣のボックスから敵陣のボックスまでの広大なエリアを走り続けるタフな中盤の将校──実際に大英帝国四等勲爵士、つまり「オフィサー(OBE:将校)」の受章者でもある。武器は特別なキックと心身の強さ、有効な技、そして知性だった。
労働の尊さを知る紳士。そんな英雄が監督として、どんな指導や采配を見せるのか。チェルシーのサポーターだけでなく、多くのフットボールファンが興味津々だ。
川崎戦では、おそらくその時点でベストと言えるメンバーを先発に並べた。コンディション不良のエンゴロ・カンテ、扁桃炎のタミー・エイブラハム、腹痛のケパ・アリサバラガはベンチ外となり、4-2-3-1システムの中盤の底には、ジョルジーニョとマテオ・コバチッチが入った。
6歳からチェルシーのマウントに注目。
もっとも大きな注目を集めた選手のひとりは、トップ下に配された20歳のメイソン・マウントだ。
6歳からチェルシーの下部組織で育まれ、過去2シーズンはローン先で武者修行。昨季はランパードが監督としてデビューしたチャンピオンシップ(イングランド2部リーグ)のダービー・カウンティで主力として活躍し、昇格プレーオフの決勝進出に貢献している(惜しくも決勝でアストンビラに敗れ、ダービーは昇格ならず)。
マウリツィオ・サッリ前監督が任期1年でイタリアに戻り(ユベントスへ)、急遽、白羽の矢が立ったランパードはこの愛弟子(同様に昨季をダービーで過ごしたセンターバックのフィカヨ・トモリも)と共に古巣へ帰還。指揮官の現役時代にも通じる中盤のプレーメーカーは、来日の前にクラブと5年契約を交わした。