球体とリズムBACK NUMBER
チェルシー新体制と主力選手の信頼。
「ランパードとともに楽しんでいる」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/23 17:00
ランパード監督とチェルシーのチーム構築は始まったばかり。23日のバルセロナ戦ではどのようなテストを行うのだろうか。
クオリティーには自信がある。
2列目ならどこでもこなすマウントは、後半序盤に左サイドを駆け抜けてスルーパスを引き出し、カットインから惜しいシュートを放った。
それ以外にもシャープな動きを何度か見せ、監督から「エネルギーに溢れている。彼はすでにファーストチームの一員で、今季は周囲のクオリティーに引き上げられて、大きく成長していくはずだ」と高評価を得ている。
またフィールドプレーヤーで唯一、フル出場したダビド・ルイスは高精度のフィードで局面を変えたり、チャンスにつなげたりした。
しかし試合を決めたのはこの元ブラジル代表が「友人」と呼ぶ、かつてのセレソンでの同僚レアンドロ・ダミアンだった。87分、得点者が「モンスター」と称える中村憲剛のクロスを頭で叩き込み、これが決勝点となり、Jリーグ覇者がヨーロッパリーグ王者を下している。
「この時期だから仕方ないことではあるが、細かいところはまだまだ改善の余地がある──ボール回しやゴール前のプレーなど。だがそれも時間の経過とともに改善されるはずだ。うちの選手のクオリティーには、自信を持っている」
敗戦の後、ランパードはそう振り返った。不機嫌にも聞こえるトーンだったが、選手たちへの信頼はしっかりと示した。
試合前日練習で選手が語ったこと。
その後のミックスゾーンでは、ほとんどの選手たちが無言で通り過ぎていったけれど、試合前日の練習の後には、マルコス・アロンソやマウント、オリビエ・ジルー、ダビド・ルイスが口を開き、誰もが「ランパードとの仕事を楽しんでいる」と異口同音に明かしてくれた。マウントにいたっては、「チェルシー育ちの僕にとってはロールモデルだ」と喜びを隠さなかった。
ただしどんなに好意的に見ても、戦力の不安はつきまとう。昨季リーグ戦で16得点のエデン・アザール(レアル・マドリーへ)と5得点のゴンサロ・イグアイン(所属元のユベントスへ)が去ったというのに、前述の処分により新戦力を獲得できないのだ。