球体とリズムBACK NUMBER
チェルシー新体制と主力選手の信頼。
「ランパードとともに楽しんでいる」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/23 17:00
ランパード監督とチェルシーのチーム構築は始まったばかり。23日のバルセロナ戦ではどのようなテストを行うのだろうか。
“二重苦”の中でも全然暗くない。
川崎戦ではミヒー・バチュアイとオリビエ・ジルーが45分ずつ1トップを担い、ウイングには昨季中に契約を済ませて今季から合流した唯一のニューカマー、クリスティアン・プリシッチもプレーしたが、彼らがその大きな穴を埋めきれるのか。
昨シーズン以前から通しで見ると、ランパードは二重苦に直面していると言えなくもない。大エースが去ったあと、さらに補強もできない時期に指揮権を託されたのだから。
もっとも、チームの空気は全然暗くない。少なくとも三ツ沢球技場と日産スタジアムで観たブルーズには「意欲と姿勢」(ランパード監督)があった。一部のファンに嫌われたサッリが放り出したロンドンの名門に、新米指導者のレジェンドが勇気を持って舞い戻ってきたのだ。
ダビド・ルイスやアロンソたちといった選手だけでなく、クラブのチーム付き広報も「フレッシュなスタートだ」と清々しい顔で言っていた。永遠に愛される偶像が新たに指揮官の座に就いて、アガらないチームなどない。
一流監督の教えを得たキャリア。
新監督ランパードは「タイトル? 大変だけど、常にそこを見ないとね」と、多くの若手と共にあくまで高みを見据える。オーナーのロマン・アブラモビッチはこれまでの方針をあらためて、長期的な視野に立ち始めたとも言われる。
むろん実際のところは定かではないが、もともと優れたユースチーム──過去5年のUEFAユースリーグで優勝2回、準優勝2回──を持つクラブだけに、望ましい方針に思える。
ランパード監督には、指導者としての経験は少ないが、ジョゼ・モウリーニョやフース・ヒディンク、カルロ・アンチェロッティら、一流監督の教えを得てきたキャリアがある。カリスマと深い知見も、間違いなくある。昨季のダービーでも、キャリア1年目から生き生きした若者たちと好成績を残した。
新シーズンのプレミアリーグ開幕戦は、マンチェスター・ユナイテッドとのアウェー戦だ。プレミア初采配の舞台としては、やや厳しい気もするが、ここで結果を手にすれば、一気に勢いに乗る可能性もある。レジェンドが統率する新生ブルーズの行く末はいかに。