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ロンドン興行とブルペンの崩壊。
田中将大も苦戦、本塁打時代の闇。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2019/07/06 11:45

ロンドン興行とブルペンの崩壊。田中将大も苦戦、本塁打時代の闇。<Number Web> photograph by Getty Images

6月29日、ロンドンシリーズ第1戦に先発登板した田中将大。日米通じて自己最短の2/3回を6失点で降板となった。

最近の継投策は明らかに変わった。

 いうまでもなく、ブルペンの仕事はもともと苛酷だ。年間50試合から70試合に登板し、たとえ短いイニングとはいえ、100マイルの速球や90マイルの高速スライダーを全力で投げ込む。登板前のウォームアップも含めると、肩や肘にかかる負担は相当のものといわねばなるまい。精神的なストレスも大きい。

 さらに、最近の継投策は明らかに変わった。先発投手は打者2巡までしか投げないのが普通になったし、投球数も88球程度が目安とされている。その分、ブルペンの負担は大きくなる。しかも近ごろは「オープナー」の採用で、仕事の局面がさらに増えた。要するに働きすぎで、これではエリート・クラスのリリーヴァーが金属疲労を起こしても不思議ではない。

 先に挙げたビッグネームだけでなく、デヴィッド・ロバートソン(防御率5.40)、ジェオリス・ファミーリャ(防御率7.81)、ジョー・ケリー(防御率6.26)など、エンストを起こしている中堅リリーヴァーの数もけっして少なくない。

 これは、「ホームラン時代のダークサイド」という表現だけで片づけられる現象だろうか。1試合に5人も6人も救援投手が出てくる野球とは、果たして健全なのだろうか。

 この揺り戻しは、近々訪れるような気がする。さしあたって必要なのは、「苦境でも耐え抜く先発投手の育成」だろう。首脳陣が「転ばぬ先の杖」という予防第一の発想を改め、先発投手が長いイニングを辛抱強く投げ抜く習性を取り戻せば、いまのいびつな状況は、いくらか改善されていくかもしれない。
 

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