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ウィザーズGMやHCが語る八村塁。
「みんながルイのことを大好きだった」
posted2019/06/25 11:45
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Ned Dishman/NBAE via Getty Images
NBAコミッショナーのアダム・シルバーがステージ上に出てくると、八村塁は下を向いた。直前に代理人から指名を知らされていたのだという。シルバーが「2019年ドラフト9位で、ワシントン・ウィザーズは日本の富山出身でゴンザガ大学のルイ・ハチムラを指名しました」と発表すると、満面笑顔で顔をあげた。
壇上でコミッショナーと握手し、記念撮影した後、レポーターに「カメラに向かって日本の人たちにメッセージを」と言われると、またも笑顔を輝かせ、日本語で言った。
「皆さん、やりました。日本人初(ドラフト1巡目指名での)NBAです!」
こうして、八村は笑顔とともに歴史に名前を刻んだ。
NBAドラフトは多くの夢が現実となる舞台だ。コミッショナーに名前を呼び上げられることで、子供の頃から夢見ていたNBAの世界への切符が与えられる。八村にとっても、中学1年のときにコーチから「お前はNBAに行ける」と言われたときから信じてきた夢が現実になったときだった。
予想より早い順位での指名となった八村。
実は1巡目9位というのは、ドラフト前の多くの専門家たちが出していたモックドラフト(予想)よりも少し早い順位での指名だった。
大方の予想では11位のティンバーウルブズ(直前にトレードで指名権をサンズに譲渡)、12位のホーネッツ、19位のスパーズのあたりが八村に興味を持っていると言われており、これらのチームの指名を予想する専門家が多かった。9位という予想も、ウィザーズが指名するという予想もなかった。ウィザーズ・ファンの中にはデューク大のカム・レディッシュの指名を期待していた人たちもいて、八村の指名にがっかりしたという声も出ていた。
ウィザーズも一時は、もう少し下の順位でも八村を指名できるかもしれないと、トレードで順位を下げることも考えたのだという。実際に、下位のいくつかのチームから指名順交換のオファーがもちかけられた。しかし、持ちかけてきた中に八村狙いのチームがありそうだと感じ、結局9位に留まった。
「多くの人(チーム)が9位を欲しがった。みんな、同じ選手(八村)の指名を考えていたのだと思う。100%確実ではないけれどね。でも、この仕事を長くやっているから、チームがドラフトで特定の順位を欲しがり、特定の選手を取りたいときはわかる。それをさせるわけにはいかなかった。ルイこそ、私たちが欲しかった選手なんだ」と、トミー・シェパードGM代行は語る。
実は、ドラフト前の八村に対する評価は、人によって差が大きかった。