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震災に響いた「ピッチャー、田中」。
独断!平成プロ野球名勝負ベスト10。 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKyodo News

posted2019/04/25 07:30

震災に響いた「ピッチャー、田中」。独断!平成プロ野球名勝負ベスト10。<Number Web> photograph by Kyodo News

楽天を初の日本一に導いた田中将大。震災で沈む東北の人々に、大きな希望を与えた。

再現不可能な優勝決定戦。

【第2位】平成6年10月8日 中日対巨人(ナゴヤ)

 プロ野球史上初の最終戦での同率2チームによる優勝決定戦は、その日付から「10.8」と呼ばれ、ファンには定着している。追いつかれた巨人は長嶋茂雄監督が率い、できたばかりのFA制を使い落合博満を強奪した相手こそが、追いついた中日だった。長嶋による「国民的行事」という絶妙のキャッチコピーや「勝つ! 勝つ! 勝つ!」と連呼して選手を鼓舞したミーティングなど、試合が始まるまでのストーリー性にも富んでいる。

 テレビ中継の最高視聴率は現在では更新不可能な48.8%。巨人は球界の盟主であり、プロ野球こそが国民の娯楽という時代観も表している。

 巨人は落合が15号を、2年目の松井秀喜がそれを上回る20号本塁打を放つなど、一発攻勢で奪ったリードを、槙原寛己、斎藤雅樹、桑田真澄の三本柱による継投で守り切り、長嶋監督は胴上げされた。

闘将が告げたエースの名前。

【第1位】平成25年11月3日 楽天対巨人(Kスタ宮城)

 多くの犠牲者を出した東日本大震災から2年。あの日の仙台は雨が降っていた。3勝3敗で迎えた日本シリーズ第7戦。3点をリードした9回、楽天の星野仙一監督は三塁ベンチを静かに出て、はっきりとわかる口の動きで審判に「田中!」と告げた。シーズン24勝無敗の絶対エースは、前日の第6戦で負け投手となっていた。しかも160球完投。その田中将大を胴上げ投手に送り込んだのだ。

 闘将と呼ばれ、打倒巨人にすべての情熱を捧げた星野にとっても、長年の大きな夢がかなおうとした瞬間であった。スタンドを埋め尽くした2万5249人による「あとひとつ」の大合唱に背を押されてマウンドに上がった田中は、走者を背負いながらも最後の打者を空振り三振に……。楽天ファン、東北の人間はもちろんのこと、すべての野球ファンが納得するという意味では、名勝負を飛び越え伝説の試合である。

 名場面とは月日がたっても目に浮かぶものなのだろう。令和のプロ野球も、いつまでもファンに語り継がれる名勝負の数々を繰り広げてもらいたい。

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