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“秘伝のタレ”を知る子が続々代表に。
ヴェルディ育ちが受け継ぐ「匂い」。
posted2019/04/15 10:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
JFA/AFLO
「ヴェルディはミニゲームでも負けちゃいけねえんだよ!」
夕空に響くはしゃいだ声、そして笑顔。グラウンドの隅っこに小さなゴールをふたつ並べ、7、8人がボールを蹴っている。東京ヴェルディユースの選手たちだ。
練習が始まる前、ピッチが空くのを待っているのだろう。おとなしく座って待機するような性質をしておらず、何人か集まれば自然とボール回しやゲームが始まる。その横ではジュニアのちびっ子がシュート練習だ。
東京都稲城市、多摩丘陵の一角。よみうりランドに隣接する練習場、通称「ランド」で長い年月をかけて育まれた土着の文化である。
今後、日本代表の中軸を担うだろう中島翔哉(アル・ドゥハイル)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)をはじめ、3月のキリンチャレンジカップでおよそ1年半ぶりに招集された小林祐希(ヘーレンフェーン)、新顔の安西幸輝(鹿島)、畠中槙之輔(横浜F・マリノス)らも、そうしてボールに親しみ、プレーヤーとしての輪郭を際立たせていった。
ヴェルディは「つぎ足しつぎ足し」。
女子の育成組織、日テレ・メニーナの監督を務める古川将大はアカデミー時代の同期に森本貴幸(アビスパ福岡)がいる。
「我先にとグラウンドに現れ、練習が終わったあとも居残ってなかなか引き上げない。ミニゲームで熱くなりすぎて、最後はトゲトゲしく険悪な雰囲気で帰る。僕らはそんな毎日でした。ボールを蹴りたがる子の多さは、いまも昔も変わらないですね」
小笠原資暁(日テレ・ベレーザコーチ)は、かつて10年ほどアカデミーの指導に携わってきた。
「老舗のうなぎ屋さんの秘伝のタレみたいなものかな。ここには、つぎ足しつぎ足しされながら、ずっと変わらない味がある。特長的なのは、相手との間の取り方であったり、ボールを放すギリギリまで駆け引きがあること」