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スター誕生! フェラーリの21歳。
ルクレールがF1王者2人を圧倒。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2019/04/07 09:00
フェラーリ加入わずか2戦目で圧巻の走りを見せたルクレール(右)を、ハミルトン(左)も称えた。
人生で経験した3人との惜別。
その後、バルテリ・ボッタス(メルセデス)にも抜かれ、3位でフィニッシュしたルクレールだが、スタンドから勝者にも負けない大きな拍手が贈られたのは、言うまでもない。マシンを止め、ヘルメットを脱いだルクレールに、しかし涙はなかった。
この若者は、21年間の人生で経験した大切な3人の人物との惜別によって、すでに強い精神を鍛えられているのだ。
ひとりは、'15年に他界したジュール・ビアンキ。両親同士が友人だったことから、ビアンキの父親が所有するカートコースで幼いころからF1を目指していたルクレールにとって、8歳年上のビアンキは良き目標だった。しかし、'14年の日本GPで大事故に遭い、翌年天国へ旅立った。
2人目は、父親のエルベだ。ビアンキの死から2年後の'17年。今度は闘病中だった父親が息を引き取った。驚くべきことに、その死を知ったのはアゼルバイジャンGPでF2を戦っていた最中だったにもかかわらず、ルクレールはその悲しみを誰にも打ち明けず、レースを戦い、しかも優勝した。
「このポールポジションを……」
3人目は、前フェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネだ。フェラーリの育成ドライバーだったルクレールの才能を高く買い、'18年にフェラーリPUが搭載されているザウバーからF1にデビューさせたマルキオンネは、昨年序盤のザウバーでの走りを見て、'19年にフェラーリに移籍させる決断を下す。
だがその後、彼は急逝。ルクレールはマルキオンネが獲得した最初で最後のフェラーリドライバーとなった。
レース前、ポールポジションの獲得について尋ねられたルクレールは、こう語っていた。
「色んな感情が込み上げてくる。このポールポジションを父とジュール、そしてチャーリー(・ホワイティング/今年3月に急逝したFIAレースディレクター)に捧げたい」