イチ流に触れてBACK NUMBER
イチローを支えた弓子夫人と、
2800個の塩おにぎり、愛犬一弓。
posted2019/03/28 08:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Naoya Sanuki
弓子夫人とおにぎり、そして愛犬一弓(いっきゅう)。
イチローは東京での引退会見でひとつのエピソードを明かした。
「僕はアメリカで結局3089本のヒットを打ったわけですけど、ゲーム前にホームの時はおにぎりを食べるんですね。妻が握ってくれたおにぎりを球場に持って行って食べるんですけど、それの数が2800ぐらいだったんですよね。(妻は)3000いきたかったみたいですね。そこは3000個握らせてあげたかったなと思います」
野球にありったけの情熱と時間を捧げたイチローに対し、20年もの間、支え続けてきた弓子夫人。イチローにとっては、妻であると同時にともに戦った“戦友”の意識もあろう。だから、この言葉を彼は選んだのだと感じる。
その一方で、彼が口にした具体的な数字にはちょっぴり驚かされた。だが、すぐさま、夫婦の間でこんな会話がなされたのだろうと推測した。
おにぎり2800個の根拠。
「これまで、いくつおにぎりを握ってきたのかな?」
ふたりが実際に握ったおにぎりの数を数えていたわけではあるまい。「2800ぐらい」という数字はこんな計算の上に成り立ったのではないか。
18×81×2=2916
18は昨季までのメジャー在籍年数。
81は本拠地での年間試合数。
2は1回に食べるおにぎりの数。
2916でなく、2800ぐらいとなった理由は、昨年5月2日に会長付き特別補佐へと立場を変えたためであろう。昨季イチローが本拠地でプレーしたのは8試合。となると……。
17×81×2+8×2=2770
少し足りない分はなにか。
ヤンキースに在籍した2シーズン半にはメッツとの交流戦があった。メッツの本拠地シティー・フィールドにはニューヨークの自宅から通った。その数は6試合ほどか。となれば、プラス12個で2782。限りなく近い数字にようやく合点がいった。