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日本人初のジャンプW杯総合優勝。
小林陵侑は「他の惑星の人間だ」
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2019/03/17 11:30

3月14日の大会では、2本の140m超えを記録した小林陵侑。高梨沙羅も「天才だと思う」と舌を巻く。
身体能力は「とんでもない」。
こうして手にしたW杯総合優勝だが、なお驚くべきは、小林の昨シーズンまでのW杯最高順位は6位。優勝はおろか、表彰台に上がった経験すらなかったことだ。にもかかわらず今シーズン、並みいる強豪を押しのけ、突出した活躍を続けてきたのだ。
長いシーズンでのことだから、勢いとか波に乗っているといった一時的なものではない。
そもそも、小林には周囲の誰もが認める身体能力の高さがあった。土屋ホームスキー部のチームメイト、伊藤有希も「とんでもないくらい」と表現しており、陸上トレーニングなどでも抜きん出た動きを見せるという。また、身体の柔軟性やセンスも魅力としてあげられてきた。
飛躍のきっかけは平昌五輪。
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将来を嘱望される存在だった小林が一気にトップへと上りつめたきっかけは、昨年の平昌五輪にある。兄の潤志郎らの陰に隠れた立ち位置だったが、いざ試合になるとノーマルヒルで7位入賞、ラージヒルでも10位で日本勢トップの成績をあげた。
ここで手ごたえを得て迎えた今シーズン開幕前には、助走の姿勢を修正するなど貪欲に改革に取り組んだ。それを持ち前のポテンシャルで速やかに吸収すると、深い助走姿勢からしっかり踏み切り、素早く体勢を移行させる、理想的なフォームを作り上げた。
言葉にすれば簡単だが、それを実行できたところに、小林の凄みと強さがある。
また、これまで空中姿勢でも、深く前傾姿勢をとることの多かった日本人選手と異なり、スキー板と身体との間に適度な距離を保っているのも特徴だ。先端のスタイルを身につけているとも言える。