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2019年の川崎は全てを支配する。
お家芸の地上戦+ダミアンの空。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2019/02/18 17:30
J1で3連覇を目指す川崎が末恐ろしいのは、レアンドロ・ダミアンがまだ加入直後だということだ。
昨季は浦和の5バックに苦戦。
では、川崎の「いつも通り」とは何か。
言葉にすれば、「ボールを握り続けてハーフコートゲームに持ち込む」、「素早い切り替えからボールを奪い返す組織的な守備で圧倒する」などいくつかの表現はあるが、もっとも本質的な部分をいえば、対戦相手の講じてきた対策に、ピッチでの最適解を導き出しながら試合を進めていった点だろう。
例えば、この日の浦和の守りは前傾姿勢でプレッシングをかけるのではなく、ブロックを構えるものだった。基本は3-1-4-2システムだが、自陣でブロックを固める際には、両ウィングバックが最終ラインに下がり、インサイドハーフもボランチに近い位置になるため、5-3-2のような形になる。
こうなると中央のエリアは堅く、ダブルボランチの守田英正と大島僚太が厳しく監視されるため、真ん中ではリズムが作れなくなりがちだ。昨年の川崎は、リーグ2試合通じて無得点に終わった唯一の対戦相手が浦和だったが、この守備対策に苦しんだ側面もある。
相手の泣き所の「脇」を突け。
しかし今の川崎は慌てない。中盤が窮屈であれば、CBの谷口彰悟と奈良竜樹がボールを回しながら、後ろから相手守備陣の穴を丹念に探っていく。谷口が活用したのは、車屋紳太郎が主戦場にする左サイドバックのエリアだった。
「相手のシステムを考えると、サイドバックが空くかなと。シンタロウに出したら、誰がシンタロウにつくのか。そこで斜めのパス、縦のパスをうまく使えるのかなと。そこを探りながらやっていました」(谷口)
2トップとインサイドハーフの4枚が中央に構えて守る5-3-2システムでは、その「脇」のエリアは、構造的に守備が届きにくい場所になる。そこで左サイドバックの車屋紳太郎は、あえていつもより低い位置に降りて、谷口と近い距離でのビルドアップに参加してボールを引き出している。
車屋だけではない。中村や家長昭博も早い時間帯からそこに降りて攻撃の起点を作り始めている。
泣き所を突かれた浦和は、インサイドハーフの長澤和輝や右ウィングバックの橋岡大樹が持ち場を離れて対応に出て行かざるを得なくなったが、川崎とすれば、誰が守備に来るのか、そしてどこに穴ができるのか、その出方を窺っていたわけだ。