サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
森保ジャパン準優勝はよく戦ったが、
痛かったイラン戦後の心の緩み。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/02/02 18:30
準優勝に終わった、という経験はいつか生きる。森保ジャパンの初黒星は次へのステップになるはずだ。
ジョーカー不在の悩ましさ。
準決勝からの試合間隔が日本より1日少ないカタールは、失点の前後から少しずつ足が止まっている。試合の流れを一気に引き寄せる交代があってもいいが、森保監督は動かない。
スタメンの選手に経験を積ませることを優先してきた結果として、指揮官の手元には有効な交代カードがなかったのだ。中島翔哉と浅野拓磨をケガで招集できなかったことなどから、攻撃のジョーカーとなれる選手がそもそもベンチに控えていない事情もある。
打開策を講じられないままカウンターを浴び、そこから与えたCKで吉田麻也がハンドを取られてしまう。空中戦の競り合いだけに、故意ではない。だが、VARが明らかにする事実を否定したら、ビデオアシスタント・レフェリーの否定になってしまう。
ウズベキスタンのラフシャン・イルマトフがPKを宣告し、背番号11のアフィフがネットを揺らす。24カ国が目ざしたカップの所有者は、この時点で決したと言っていい。84分に伊東純也が、89分に乾貴士が投入されたが、日本がゴールネットを揺らすことはなかった。
イラン戦後の精神的な緩み。
前半の2失点は重くのしかかった。そうは言っても、システムのミスマッチにのみ理由を求めるのは間違っている。カタールが3-3-2-2の利点を生かした一方で、日本は相手のシステムの弱みを突けなかった。森保監督は自身の準備不足を責めたが、選手の対応力にも問題はある。
柴崎岳とダブルボランチを組んできた遠藤航の不在は、結果に影響をもたらす要素だった。それにしても、敗戦の主因ではない。
5度目のアジア制覇を逃したのは、精神的な緩みにあった。
準決勝でイランを下したことで、チーム内にはポジティブな空気が立ち込めた。悪いことではない。イランとのバトルは、そう思っていいぐらいの内容だった。ただ、「これでいける」といったムードが勢いを増しすぎると、精神的な緩みへと変質してしまう。
「イラン戦の流れでいけるだろうという油断やスキみたいなものを少し感じていたにもかかわらず、それを律することができなかった」
キャプテンの吉田は、試合後にこう話した。チームの先頭に立つ彼が責任を感じるのはもっともだが、日本代表を取り巻く空気そのものが弛緩していた。