錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
「一番キツい時にジョコビッチ」を
避けるため、錦織圭に必要なこと。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2019/01/24 17:00
“鬼門”ジョコビッチがまたも立ちはだかった形だが、あれだけの激戦の後の棄権を誰も責めることはできない。
それにしてもジョコは大物だった。
錦織は、ストレートで片がつく試合にはない興奮や感動を数多く生み出し、プロテニスというエンターテインメント、グランドスラムというショーの価値を高めてきたことだろう。グランドスラムで勝ち抜くためには、その錦織らしさを否定しなくてはいけなくなるのが残念だ。
しかし、「3セットで勝てればそれが一番いい。(方法を)探っていきたいと思います」と錦織。「(ツアーの)層は厚くなってきているので、長い試合を戦っていく気力と体力はまだ必要」とも語った。
それにしても、ジョコビッチはやはり大物だった。オンコートインタビューでは、落胆してコートを去った錦織に向けて「早く回復することを願っている」と励ましの言葉を贈り、その錦織に代わってファンに「今日は試合をフルで見せられなくて残念でした」と伝え、そこからはインタビュアーで元王者のジム・クーリエとの会話を自ら長引かせ、笑いもとり、ファンの失望を少しでも埋めようと精一杯のリップサービスをした。
強く、思いやりと知性あふれる王者の背中は大きい。体力的にも気力的にも最高のお手本であり、最強の敵。努力だけでは超えられない。グランドスラムの戦い方、準備の仕方、体の強化、ピーキング――チーム全体の高度な戦略が試される。