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西武・今井達也はエースになる。
辻監督は「まだ20歳。よく投げた」。
posted2018/12/13 11:30
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
埼玉西武ライオンズにとって、2018年シーズンの最終戦となったクライマックスシリーズ・ファイナルステージの第5戦。5-6で敗れ、ソフトバンクの胴上げと記念撮影が終わったあと、グラウンド上ではライオンズの監督、選手一同による最終戦セレモニーが行われた。
挨拶のため、マイクの前に立った辻発彦監督が言葉に詰まり、声を震わせて「悔しいです」という一言を振りしぼった直後、ちょうど辻監督の斜め後ろに立っていた今井達也はうつむき、指先で流れる涙をぬぐった。
前の日、先発投手として自分が立ったマウンドを確かめるように視線を下に落とし、しばらく顔を上げることができなかった。
「あのときは、自分の投げた試合のことを考えていました。大事な試合で先発させてもらって、『あそこをとっておけば……』『自分が勝てなかったのが大きかったな』と……」
ひとしきりそう話すと「うん」とつぶやき、何かを思い返すように言葉に詰まる。
「やっぱり、ああいうところで勝てないとダメだなという思いがいちばん強かったです。セレモニーのときも、それが頭をよぎっていました。泣いている監督を見て、監督もそれだけ悔しかったんだなと思うと……」
首脳陣は今井の投球を評価。
今井はクライマックスシリーズ・ファイナルステージの第4戦に先発。初戦を菊池雄星で落としたライオンズは2戦目、多和田真三郎を立てて勝利。続く榎田大樹はシーズン中のようなピッチングを見せることができず、2勝2敗(アドバンテージの1勝を含む)と追い込まれた。
次の先発に選ばれたのが高卒2年目、弱冠20歳の今井だった。
今井は4回と3分の2イニングを投げ、4失点で敗戦投手となった。試合後、首脳陣に囲まれた辻監督はさばさばとした表情で言った。
「まだ20歳ですよ、よく投げたと思う」
重圧のかかる試合での今井の堂々としたピッチングを高く評価した。