3年と4年だけで放った19本塁打。

　試合で打てなければ、「なぜ打てないのか？」と自問自答を繰り広げながら、ひたすらバットを振る。1試合、1試合そうやって研鑽を積み、4年生の2017年にはリーグ記録の年間12本塁打。わずか2年で19本ものアーチを神宮の杜に描いた。「慶應のバレンティン」「慶應のエルドレッド」と称され、岩見は六大学の歴史に名を刻んだ。

　周囲からアマチュア屈指の長距離砲と絶賛され、楽天からドラフト2位で指名を受けた。だからといって、自分を見失うことはない。

「僕はまだまだ、みなさんが思い描くような選手ではないんで」

　ホーム最後の3連戦では、バットにボールを当てられず代打を送られ、俯き、試合後も最後までロッカールームを出られなかった。

平石監督代行にかけられた言葉。

　ただ、落ち込んではいられない。ある言葉が岩見の胸を打っていたからだ。

　ある日の試合後のこと。クラブハウスの大浴場で汗を流していると、平石洋介監督代行（当時）がいた。そこで岩見は、こんな言葉をかけられた。

「自分から勝負を仕掛けてダメなら次につながる。でも、悩んだままではつながらない」

　平石監督代行は、その言葉の意図をこのように説明していた。

「プロだって打席で悩むことはあります。どれだけ考えて練習しても、手も足も出せないことは誰にだってある。打席での岩見を見ていたらそう感じたんでね、自分なりに言葉をかけさせてもらったんですけど」

　岩見が奮い立つ。周りは期待してくれている。だからこそ、ダメな自分を受け入れなければいけない、と。

「打席での考えとかボールの待ち方、スイングの入り方を変えられないから結果を出せていないのかもしれませんけど、一番はピッチャーやボールに向かっていく姿勢が足りないというか。相手に退かずにバットを振らないと始まらないですからね。監督やコーチが使ってくれる以上は結果を出さないと。今は落ち込むもクソもないんで」

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