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今季3勝目、成田美寿々の奇策。
キャディーの本職はトレーナー!?
text by
藤森三奈(Number編集部)Mina Fujimori
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/10/15 17:45
成田美寿々と安福一貴トレーナー兼キャディー。このタッグは一度限り?
安福がここに呼ばれた理由。
安福は、東急セブンハンドレッドでの見慣れない光景に戸惑っていた。
自身もゴルフの腕前はなかなかのもので、ゴルフに関して素人というわけではない。セブンハンドレッドは月に一度はプレーしにくるほど慣れ親しんだコースでもある。しかし、トーナメント会場となるとすべてが違って見えた。ましてやキャディーとなると知らないことばかりだ。
成田が気を使ってくれているのと同様自分も、全方位的に気を使わなくてはならなかった。
同伴競技者に迷惑にならないティーインググラウンドやグリーンでの立ち位置。成田にパターを渡すタイミングがグリーンに行ってからでは遅いことも、今回初めて知った。
一方で自分がここに呼ばれた理由もよくわかっていた。
成田ができるだけリラックスして、良いゴルフができるよう努める――1打でもスコアが縮まればとの一心で、バッグを担いだ。
いつもの雰囲気をつくるだけ。
ジムで彼女を笑わせているように、フェアウェイを歩きながらくだらないことを言って笑わせた。
グリーン上では、ラインを読んでいるふりをして、「ボール1200個分フック」などと言ってリラックスさせた。
余計な仕事はしない、いつもの雰囲気をつくるだけだ。
ただひとつ、ひそかに思いついたことを実践した。
選手は誰しもグリーンで一番時間を使う。パターを持ってから打つまで、そこにかける時間と選手の気持ちは他の1打とは違うはず、と安福は考えたのだ。プレーを続けているうちにパターにはどんどん選手の“念”、つまり気合や緊張感が込められていき……重くなっているはずだ、と。
「後半になって僕がパターのシャフトを拭き始めたら、これはいけるぞという合図ですよ」と安福が教えてくれた。シャフトに籠ったその“念”を取り払う作業なのだ。