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大迫傑が出した日本記録は予兆だ。
金哲彦が予言するマラソンの新時代。 

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金哲彦

金哲彦Tetsuhiko Kin

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photograph byAFLO

posted2018/10/13 11:30

大迫傑が出した日本記録は予兆だ。金哲彦が予言するマラソンの新時代。<Number Web> photograph by AFLO

シカゴマラソンで、2時間05分50秒の日本新記録をマークした大迫傑。

世界の強豪相手にも堂々と勝負。

 大迫の真骨頂は筋金入りの負けず嫌いにある。

 大迫はシカゴマラソンの前「すべてがマッチすれば無理な記録ではないが、勝負に徹したい」とすこし控えめなコメントをした。しかし、2時間5分台を視野に入れていたことを私たちは知っていた。

 コースや気象条件、ペースメイクに大きく左右されるフルマラソンの記録において有言実行することはかなり難しい。

 しかし、それをやってのけた。やはり、大迫は半端ない。

 優勝した長距離王者のモハメド・ファラー(イギリス)とも堂々と勝負できた。これはトラック競技では成し得なかったこと。また、リオ五輪マラソンメダリストのゲーレン・ラップ(アメリカ)と真っ向勝負し勝った。

ギアチェンジにもきっちり対応。

 今回の日本記録が決して容易でなかったことはラップタイムを見てもわかる。

フィニッシュ 2時間05分50秒
5km 14分53秒
10km 15分19秒
15km 14分56秒
20km 14分44秒
25km 15分29秒
30km 14分28秒
35km 14分31秒
40km 14分43秒
42.195km 6分51秒

 雨と風という悪条件もあり、ペースメーカーがうまく機能せず、5キロごとのペースは安定しなかった。

 大きな集団にしびれを切らしたジェフリー・キルイ(ケニア)が25キロから30キロまでの5キロ、急激にペースを上げた。これまで、日本選手がもっとも苦手としてきたギアチェンジだ。

 しかしそれに大迫と藤本拓(トヨタ自動車)が対応した。そして、大迫はその時点でまだ余力を残していたのだ。

【次ページ】 後半のハーフの方が早かった。

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