球道雑記BACK NUMBER
ロッテ荻野貴司と迷い込んだ少年。
リハビリ中でもプロフェッショナル。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/09/25 08:00
プロ9年目の今季も離脱前まで打率.287、20盗塁とリードオフマンの役割を果たしていた。
その姿はまぎれもなくスーパースターだった。
しばらくすると、少年は近くを探していた親のもとに合流した。その姿を見届けた荻野は、ふとこんな言葉を漏らした。
「自分の息子を見ながら時々、思うんです。もし、息子が選手にサインをもらいに行って断られたりしたら、どんな気持ちになるのかなって。やっぱり落ち込んだりするのかなって……そしたらできる範囲で、ファンの子供たちの期待に応えてあげたいなって思うんです」
大人の話はそれくらいにして、すぐに取材を終えた。
その後、荻野は駐車場の外で待つ先ほどの少年のもとへ走って行き、約束通りサインに応じた。すると、少年以外にも数人のファンが駆けてきて荻野にサインを求めたが、それでも嫌な顔をせず、むしろ笑顔を作りサイン、そして写真撮影にも応じていた。
ファンから握手してくださいと求められれば、怪我をしている右手をすっと差し出して、それに応じる。
そこに立っていたのは紛れもなくスーパースターの荻野貴司だった。