サムライブルーの原材料BACK NUMBER
大島僚太は局面より90分で考える。
「試合終了の段階で勝っていれば」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byWataru Sato
posted2018/09/21 12:45
攻守両面で試合ごとに存在感を増す大島僚太。その深遠なプレーぶりは見逃せない。
労力を使わせるだけ使わせて。
今年のフロンターレの傾向は、1点差で勝つゲームが多い。中断明けはここまで7勝のうち5勝がそうだ。破壊力がウリのチームだが、真夏の連戦を考えて失点を抑えつつ省エネで勝ち切ることも随分とうまくなった。
大島は言う。
「まず先制点を与えたくないというのがあります。先に点を取られると、どうしてもその後パワーを使っていかなければならなくなりますから。僕としては0-1でずっと進んでも、2失点目をせずに試合終了の段階で逆転していればいいと思っています。
リードしている時も、相手はパワーを使って1点を取りにくる。ならば労力を使わせるだけ使わせておいて、逆にこっちがパワーを出して1点を取れば勝てる。そういう感覚と余裕を持ちたいと思っています」
焦るからファウルでセットプレーを与えて、失点に結びつくケースもあるだろう。
慌てない、慌てない、ひとやすみ、ひとやすみ。アニメ「一休さん」のセリフではないが、いかなる状況でも慌てずにいかに自分の、チームのパワーをコントロールして勝負をつかみにいくかに今の彼は集中を注いでいる。
「70分以降の集中力が大切」
この感覚を持つようになったのも、昨年ガンバ大阪から加入した阿部浩之が大きいという。ガンバで3冠を達成している阿部からは「落ち着こう」という声がよく飛んでいたとか。落ち着くとはどういうことか、落ち着くことで何が見えてくるのか。冷静を失わないことが勝利への最短距離だということを肌感覚で理解できた。
90分間のトータルデザイン。
なかでも今の大島が意識を向けるのは残り20分間、後半25分からのプレーだという。周りの疲れが見えてきたときに、どう違いを出すことができるのか――。
「スコアや相手の特徴で異なりますけど、70分以降の集中力が大切になってくる。ずっと(最後まで)保てるようにしておく感じにはしておきたいな、と。判断が遅れないようにしなければならないので」