酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
球数問題は高校どころか少年野球も。
投げすぎは「将来性の先食い」に。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/31 07:00
金足農フィーバーを呼んだ吉田輝星のピッチング。今後のキャリアに影響が出ないことを祈るばかりだ。
BCリーグでの極端な打高投低。
医師や理学療法士を配置するなど、肩肘の損傷で投手を断念するような事故を起こさないための体制を高野連が取っていることは間違いない。ただそれは大会期間中だけのことであり、その後の影響についてはさほど配慮していないように見えるのだ。
この問題は、独立リーグを見るとよくわかる。ルートインBCリーグは、今年に入って選手の26歳定年制を実施した。これによって20代半ば以降の投手はほぼいなくなり、各球団で高卒間もない投手がマウンドに立つようになった。これによって、リーグは極端な「打高投低」になり、特に四球数が増大している。
ルートインBCリーグはNPBと提携しているため、審判はNPBと同じ厳格さでジャッジをする。NPBファームとの交流戦が実施するためだ。
それもあって今年のルートインBCリーグは、高卒間もない投手が、いきなりプロ野球の基準で投げたらどうなるのか、という実験の場になっている。
高卒直後の投手はなかなかストライクが取れず、なおかつ打者はNPBの二軍クラスの実力がある。自信を持って投げたボールも打たれる。その結果、防御率は低下して極端な「打高投低」になってしまったのだ。
もちろん、超高校級と言われる投手の中には、いきなりプロの基準で投げて通用するケースがまれにあるが、高校野球とプロには本来これくらいの力の差があるのだ。
「能力、将来性の先食い」が。
高校から上のレベルに進むと、さらなる制球力と球速、球のキレが要求される。
しかし、高校での投球過多を経た投手は、その「ギアアップ」ができなくなっていることが多い。端的に言うと「能力、将来性の先食い」になってしまう可能性が高いのだ。「投球過多」の最大の問題はここにある。
実は甲子園のメディカルチェックでは、多くの投手に骨や軟骨部分に損傷や変形が見つかる。それらはつい最近できたものではなく、数年以上前にできたものだ。そしてそうした「古傷」については、医師はドクターストップの判断材料にしていないのだという。
高校でエースを任される優秀な投手の多くは、リトルシニア、ボーイズ、ヤングなどの少年硬式野球出身だ。小学校、中学校から硬球を手にして野球をしている。